北海道内在住者として初めて新型コロナウイルスの感染が確認された50代男性に関する情報公開のあり方に絡み、道は17日、職業などの情報を原則公開する方針を発表した。14日の発表時には国籍や職業などを明らかにしなかったが、方針転換の背景には、情報公開に対する消極的姿勢に批判が高まったことがある。【真貝恒平、澤俊太郎

 「患者の国籍は言えない。北海道居住としか言えない」。14日夜、取材に応じた道幹部は感染した50代男性に関する報道陣の質問に同じ答えを繰り返した。道は「陽性の素早い公表が第一で、厚生労働省と同等の基準で公表する」とし、事前に同省と調整した資料の発表内容に国籍がなかったため道は発表できないと判断したが、同時刻にあった厚労省の会見では、男性が日本国籍と発表していた。

 鈴木直道知事は17日の記者会見で「国籍を発表するということが道に伝えられず、(厚労省と)行き違いがあった」と説明。知事のSNSにも国籍や職業、居住地域などの公表を求める声が殺到する事態になり、「道民が不安を持ったことは申し訳ない。報道機関に丁寧な説明が不足していた部分があった」と釈明した。

 道はケースに応じて、公表の状況を具体的に変えてきている他の自治体もあることなどを考慮し、14〜16日に庁内で知事や副知事などによる協議を実施。個人情報の保護に考慮した上で、公表基準の変更を決めた。実際、道には15〜16日の2日間で「北海道と言われても分からない」「エリアを示してほしい」など、より詳細な情報を求める電話が110件以上寄せられた。

 道は今後、非公表としていた国籍、職業を明らかにし、居住地や医療機関の場所も「道内」ではなく、振興局単位を基本とする。集団感染など特別な事態の場合は、さらに詳しい情報を発表する場合もあるとした。

 17日の発表では、男性の職業は自営業で、石狩振興局管内に居住。潜伏期間中の海外への渡航歴はなく、15日に同管内の医療機関から感染症指定医療機関に転院し、17日現在、集中治療室(ICU)で人工呼吸器を装着し、意識はあるが重症。道は濃厚接触者として男性の家族、同僚、医療従事者の計43人を特定。健康観察を行い、このうち医師が感染を疑った16人は検査の結果、全員陰性だった。濃厚接触者は今後増える可能性があるという。関係者によると、札幌市在住という。

 道は感染経路が不明な患者が発生し、従来とは違う局面に入ったとし、鈴木知事は「不安をいたずらに増大しない範囲で、ケースごとに判断しながら積極的に公表していく」と話した。
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