海外の統計によると、4人に1人が子供時代、あるいや思春期に、一度は盗みやいじめ、嘘、暴力といった反社会的な行動パターンを見せるという。
だがほとんどの人は、こうしたことからいずれは卒業することになる。

しかし、そのうちの1割は、大人になっても反社会的行動パターンから抜け出せない。
そうした人の脳をMRIで検査した結果によれば、彼らの脳は普通の人とは少々違うところがあるようだ。
『Lancet Psychiatry』(2月17日付)に掲載されたユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンをはじめとする研究グループによる調査結果によると、反社会的行動をやめられない人の脳は表面積が小さく、いくつかの領域の皮質が薄いことがわかったという。

■ 反社会的行動が止められない人の脳は面積が小さく皮質が薄い

この研究では、45歳の参加者672名の脳をMRIで検査して解析した。
参加者の66パーセントは反社会的行動歴がない人(非反社行動グループ)、25パーセントは若い頃にそうした行動が見られた人(元反社行動グループ)、12パーセントは大人になってからもそうした行動が見られる人(反社行動グループ)だ。

なお最後のグループは、暴力を伴う喧嘩、虐め、器物破損、嘘、無断欠勤、窃盗といった問題行動が45歳になっても続いている。
脳全体で見た場合、反社行動グループの脳では、360領域のうち282領域で表面面積の縮小が確認された。

また目的指向行動、感情の制御、動機(いずれも反社会的行動の要因となりうる)などに関連する11領域の皮質が薄いことも分かった。
一方、元反社行動グループでは、このような脳の広範囲に見られる構造的な違いは認められなかったという。

■ 生まれつきのものか? 環境か? 今なお続く議論

この結果は、やめられない反社会的行動が生まれつきのものであるとはまでは言っていない。
問題行動が生まれつきの脳の構造に起因するものなのか、それともその行動自体の結果として徐々に発達するものなのかは、今のところはっきりしないままだ。
また麻薬や喫煙、あるいはダイエットといった環境要因に起因する部分もあるだろう。

脳の発達異常と反社会的行動とが結びつけられたのはこれが初めてではない。
だが、それが子供時代だけで終わる人と大人になってからも続く人とで、脳のどこが違っているのか具体的な領域まで明らかにしたのは、この研究が最初だ。

この結果は、子供の反社会的行動が、成人後の服役および心身の健康悪化のリスクを増大させると指摘した、2018年の研究結果とも一致している。
だが、こうした行動が人生や脳にどのように影響するのか解明にするにはさらなる研究が必要であるようだ。

■ 早期の治療で反社会的行動を抑制できる可能性も

また、今回の結果は、反社会的行動の治療の可能性についても含意がある。
もしこうした変化が幼い頃に、少なくとも生まれてから生じているのだとすれば、早期に治療を始めることで、大人になってからも続く悪習を違うものにできるかもしれない。

一方で、MRIのような脳撮像による分析結果は、個々の人間に当てはめられるほど確実なものではないと、研究グループは注意している。
いつまでも反社会的な行動が治らない人の脳が普通の人とは少々違うという一般的な傾向はあるものの、個人個人で見るとこれに当てはまらないケースも考えられるということだ。

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