新型コロナ、民間検査ができない「異常事態」を招いた厚労省の大失敗

甘く見ていたのではないか?

 そもそも、厚労省は今回の新型肺炎を当初から甘く見ていた。

 感染拡大を防いで、国民の命と健康を守るどころか、せいぜい「新型感染病の調査と研究が進めばいい」くらいの意識だったのだ。それは、感染初期段階の1月23日に厚労省から各都道府県に発出された「事務連絡」に示されている(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000587893.pdf)。そこには、次のように書かれていた。

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今般、国立感染症研究所において、新型コロナウイルスの病原体検出のためのPCR用プライマー(注・検査用DNA)を作成し、地方衛生研究所への発送を予定しておりますので、各自治体におかれましては、別添1「中国湖北省武漢市で報告されている新型コロナ関連肺炎に対する対応と院内感染対策」及び別添2「新型コロナウイルス(Novel Colonavirus:nCoV)に対する積極的疫学調査実施要領」を踏まえ、関係機関への周知等を含め、検査実施への特段のご協力をお願いいたします。
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 ここにあるように、検査を実施する目的の1つは疫学調査だった。彼らにしてみれば、当然である。なぜなら、国立感染症研究所(以下、感染研)は感染の拡大防止が目的ではなく、調査研究・分析するための組織であるからだ。ましてや、病気を治す臨床活動とは直接、関係がない。

 発熱などが起きて、感染を疑う人が最初に頼るのは、近くの診療所やクリニックだろう。そこで保健所と感染研を知って、全員が検査を受けられればいいが、実際には保健所段階でハネられる人が続出した。結果、患者たちは路頭に迷い、感染が広がった。

PCR検査にたどり着けないという問題

 なぜ、民間の検査機関では検査できないのか。

 先の事務連絡にあるように、そもそも、病原体を検出するのに必要なPCRプライマーを感染研が送ってくれないからだ。しかも、検査費用は公費で賄われる。検査したところで、お上に「お前は部外者だから払わないよ」と言われれば、おしまいである。

 こんな形で始まったPCR検査の枠組みは、その後も、しばらく維持されてきた。

 検査にたどり着くまでの道筋にも、問題がある。

 現状はどうか。感染を疑う人は、まず保健所に設置された「帰国者・接触者相談センター」に電話する。そこで感染疑いと認められれば、大病院に設置された「帰国者・接触者外来」の電話番号を教えてもらい、予約したうえで、診察を受ける仕組みである。

 この体制は適切だったのか。
患者視点が欠けている

 普通の人は、病気になったら、まず近くのクリニックに行く。保健所など縁がないし、電話番号も知らないだろう。なぜ、そんな仕組みにしたかと言えば「不用意にクリニックを訪れ、そこから感染が拡大するのを防止するため」というのが、厚労省の言い分である。

 そうだとしても、発熱した人がクリニックを訪れるのを止められるのか。できるわけがない。その結果、何が起きたか。クリニックでは検査してもらえず、保健所でも断られる、いわゆる「検査難民」が続出した。

 厚労省も感染研も自分たちの都合に合わせて、モノを考えている。そこには、普通の人たちが病気になったら、どう行動するか、という「患者視点の発想」はない。

 新型肺炎がこれほど大問題になっているのに、多くの診療所やクリニック、検査機関は事実上「蚊帳の外」に置かれたままなのだ。そのために「早期発見、早期治療」の大前提が崩れ「発熱後4日間は様子を見て」と、重症化するまで放置する悲惨な結果になっている。

 これが、どれほど異常な事態か、厚労官僚は分からないのだろうか。

 私は、感染研や保健所を中心にした体制ではなく、民間のクリニックと検査会社が簡単に検査できるような仕組みを構築すべきだ、と思う。そのために手っ取り早いのは、検査に健康保険を適用することだ。

 先週のコラムで書いたように、感染研は厚労省の外郭団体である(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/70557? page=4)。官僚は自分たちの予算と仕事、天下り先を失わないように仕事をする。これは「官僚の掟」だ。そんな役所と感染研任せでは、新型肺炎は止まらない。

長谷川 幸洋(ジャーナリスト)

全文は下記ソース元で読めます
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200228-00070698-gendaibiz-soci&;p=1
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200228-00070698-gendaibiz-soci&;p=2