新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、安倍政権がいきなり打ち出した小中高の臨時休校に非難ゴウゴウだ。突然の要請に自治体は「場当たり的だ」と怒り心頭で、小学生を抱える共働き家庭では「子どもを放っておけないし、いきなり仕事も休めない」と右往左往。パートタイマーで家計を支える子育て家庭にとっては、休みは収入減に直結する。政府の後手後手対応で感染に怯え、食いぶちまで奪われたらやってられない。

 猛反発を食らった安倍首相は、28日の衆院予算委員会で「パートで働く皆さんは休むことになれば、その時の収入が減少する。政府で対応を検討する」とか言っていたが、口先だけだ。対策として浮上しているのが、従業員向けの休業手当などの一部を補助する雇用調整助成金の要件緩和案。この助成制度は、業績が悪化した企業が従業員を休業させた場合に賃金や休業手当の一部を補助するため支給する仕組み。新型コロナ禍で経営が苦しくなった企業にも支給する特例措置を1月から実施していて、要件をさらに緩和するという。

「加藤大臣から速やかに実施できるよう指示をいただいており、準備を進めています。ただ、対象は雇用保険加入者です」(厚労省職業安定局雇用開発企画課)

■雇用保険非加入者は泣き寝入り

 正社員は雇用保険に原則加入しているが、パートなどの非正規労働者の場合は一部だ。「加入者の就業形態は『一般』『高齢』『特例』でのみ調査している」(厚労省職業安定局雇用保険課)というが、2007年の厚労省調査によると、雇用保険に加入するパートは48・1%。非正規労働者全体でも60・0%に過ぎない。18年の非正規労働者は2120万人(労働力調査)で、平均年収は179万円(民間給与実態調査)。月給換算で14万9166円となり、3週間分は11万1874円だ。家計に入るはずだった1兆円がパーになる計算だ。

 そもそも、弱肉強食の新自由主義に傾倒する安倍政権は、転職しやすい労働市場の構築を成長戦略に掲げ、雇用調整助成金を大幅縮小。転職支援の助成金を拡充する原資に回してきた。内閣支持率急落に焦った揚げ句の弥縫策もスカスカ。国民をナメきっている。

公開:20/02/29 14:50
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