霞が関で口頭決裁「例がない」 定義にあいまいさも―検察人事
2020年03月03日07時11分
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020030200719&;g=pol

 黒川弘務東京高検検事長の定年延長に関する法解釈変更をめぐり、森雅子法相が「口頭決裁」を得たと説明、正式な手続きだったと主張している。しかし霞が関で「口頭決裁」は日常使われている言葉でなく、他省庁からは「例がない」などの声が出ている。

 政府は1月31日、黒川氏の定年延長を閣議決定した。1981年の政府解釈では、検察官の定年は検察庁法で定めており、国家公務員法が認める定年延長は「適用できない」としてきたが、今年1月、解釈を変更したと説明。その際、協議内容の決裁が口頭でされたことに野党などが反発している。

 中央省庁の決裁方法は、役所ごとに文書管理の規則や要領などで決まっている。環境省担当者は「省内は原則すべて電子決裁」と説明。「他省庁のことは分からないが(環境省では)今まで口頭決裁している例は目にしたことがない」と語る。別の省庁の幹部OBも「口頭決裁なんてしたことがない」といぶかる。

 ただ、決裁の定義は明確とは言えない。国土交通省では、紙かシステムでの決裁を定めており、口頭決裁の記述はないというが、担当者は「意思決定を口頭で行うことは常日頃ある」と話す。

 文部科学省も文書での決裁方法を規則で詳しく定めているが、「そもそも『決裁』について明確な定義はなく、全ての事柄について文書決裁をするわけではない。上司の了解を口頭で得ることはある」(担当者)。

 先のOBも口頭了解は日常あったと指摘。決裁は口頭で行ってはならないという明確な決まりもないため、「(今回の関係者は)そこに着目し、口頭決裁と言っている部分はあるのでは」と推測する。

 2月28日の閣議後記者会見では閣僚から発言が相次ぎ、高市早苗総務相は「原則、文書管理システムなどを用い、電子決裁している。口頭で了解を得るような場合は、決裁ではなく『口頭了解』と呼んでいる」と説明。北村誠吾地方創生担当相は「必要な指示や意思決定は口頭でも行っており、それを口頭決裁と言うのであれば、行ってきたということになろうかと思う」と話している。