新型コロナウイルスに感染した大分市の30代女性に関し、市が女性側の了承を得ずに勤務先の飲食店名を公表していたことが6日、分かった。店の運営会社が市に非公表を要請している最中に、市は臨時会見で店名を明らかにした。市は「注意喚起のため、いち早く公表した」としているが、同社は「協議中の公表は納得できない」と訴える。

 市は3日午後2時から感染確認の会見を開いた。市と運営会社によると、市職員と同社幹部は同時刻から店名公表や今後の対応について協議。市側は同社に会見では女性の職業を「接客業」と公表すると説明。同社は従業員のケアや周りの飲食店への影響に対応するため、店名を非公表とするよう要請した。だが、臨時会見では佐藤樹一郎市長が店名を公表した。

 同社常務の中西正志さん(57)は「状況を鑑みれば、いずれは公表せざるを得ないとも考えていた。それを話し合おうとした時に公表され、残念だ」と強調。市担当者は「不特定多数と接触した可能性があり、感染経路特定や拡大防止のために公表した。説明が足りず、迷惑をかけたのは申し訳ない」としている。市幹部は会見後に同社幹部に謝罪した。

 広瀬弘忠東京女子大名誉教授(災害リスク学)は「感染者に関する公表は、拡大防止とプライバシー保護の両立が重要」とした上で、「今は感染経路の特定は難しく、どこで誰が感染してもおかしくない。一方、興味本位による感染者の過剰な探索が横行し、個人の尊厳が守られないケースも散見される。大分市は急いで店名を公表する理由はあったのか」と疑問を呈している。(岩谷瞬)

3/6(金) 21:02配信
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