宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」は、小惑星「リュウグウ」において昨年2019年2月と7月にサンプル採取を実施し、現在は地球への帰路についています。2度目の採取ははやぶさ2によって人工的に形成されたクレーターの付近で行われたのですが、この人工クレーターの大きさや深さを分析した論文が、クレーター形成の瞬間から数分間の様子を捉えた画像とともにサイエンスの電子版に掲載されました。

■形成されたクレーターの直径は14.5m、深さは1.7m

はやぶさ2によって形成された人工クレーターの分析結果を示した図。クレーターの直径(赤い点線)は14.5m、最深部(ピット、緑の点線)の深さは1.7mとみられる(Credit: Arakawa et al.,Science 2020)
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荒川政彦氏(神戸大学)らの研究チームによって今回まとめられた論文では、はやぶさ2の光学航法望遠カメラ「ONC-T」によって撮影された画像をもとに、プロジェクトチームが「おむすびころりんクレーター」や「SCIクレーター」と呼ぶ人工クレーターのサイズや深さが分析されています。

研究チームによると、形成前のリュウグウ表面を基準にした人工クレーターの直径は14.5m(誤差プラスマイナス0.8m)で、最も深い場所は形成前の表面から1.7mに達していたことが判明。人工クレーターの周囲には形成時の噴出物や衝撃で生じたとみられる半円形のリム(隆起)があり、その直径が17.6m(誤差プラスマイナス0.7m)であることもわかりました。
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DCAM3が撮影した6点の連続画像。左上のアルファベット(A〜F)は撮影順、アルファベットの右にある数値は形成からの経過時間(秒)を示す(Credit: Arakawa et al.,Science 2020)

この論文では、人工クレーター形成直後となる5秒後から8分18秒後まで、十数秒〜数分間隔で連続撮影された6点の画像が掲載されています。形成の様子を撮影したのははやぶさ2に搭載されていた分離カメラ「DCAM3」で、クレーター形成時に生じる噴出物を回避するためリュウグウの反対側に移動していたはやぶさ2にかわり、人工クレーターが形成される様子をはやぶさ2から離れた場所で撮影していました。

また、JAXAのはやぶさ2公式Twitterアカウントでは、この6点の画像に形成3分5秒前と形成3秒後の2点も含め、合計8点の画像から作成された動画が公開されています。

人工クレーターを形成した「衝突装置(SCI)」をはじめ、形成の様子を連続撮影することに成功したDCAM3や、小型ローバー「MINERVA-II1」「MINERVA-II2」、ドイツ航空宇宙センター(DLR)とフランス国立宇宙研究センター(CNES)が開発した「MASCOT」など、はやぶさ2では本体から分離する探査機や機器も活躍し、成果を残しました。今年12月には、いよいよ再突入カプセルの分離と回収が予定されています。

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