多くの人は、今の世界の生態系が、昔と比べて大きく変化したと考えています。

近年にフォーカスするだけでも、生態系の破壊により、多くの生物が現在進行形で絶滅しています。

さらに、絶滅危惧種も年々増加しており、「絶滅」や「生態系の破壊」は世界的な大問題として危惧されています。

ですから、人々は「絶滅危惧種の保護」などの方法で、生物の絶滅を食い止めようとしてきました。しかし、これは一時的な作用にすぎません。

マサチューセッツ大学アマースト校の生物学・進化生物学のジョン・ローワン氏らの研究によると、全く新しい方法によって、生態系を復元し、生物の絶滅を恒久的に防げるかもしれません。

その方法とは、「他の動物に絶滅した生物の代理をさせる」というものです。

研究の詳細は3月23日、「PNAS」に掲載されました。

生態系破壊の原因

生態系破壊の原因はいくつか考えられます。

生息地の破壊、乱獲、外来種の導入・増加、地球温暖化などです。

これらの原因によって、ある種の生物が絶滅すると、食物連鎖に影響を与え「絶滅の連鎖」が起こります。

例えば、環境破壊によってある地域からウサギが絶滅すると、そのウサギを主な食糧源としていた数の少ない肉食動物も絶滅する、という具合です。

このような変化は、時代と共に世界中で大規模に進行しているので、生態系は破壊され、絶滅種も増加しています。

対処法としての「絶滅危惧種の保護」は確かに効果があります。

しかし、生態系自体が元に戻るわけではないので、「保護」を解けば、それらの生物はいずれ絶滅することになるでしょう。

では、生物が絶滅しないためのベストで恒久的な方法とは何でしょうか?

それは、「生態系を以前の状態に復元し、維持する」というものです。

到底無理のように思えるこの方法ですが、「麻薬王が飼っていたカバ」によって現実味を帯びてきました。

絶滅生物の「代理」

1993年マサチューセッツ州アムハーストで、コカインを世界に蔓延させた「麻薬王」パブロ・エスコバルが射殺されました。

そのため、彼がコロンビアの私立動物園に連れてきた4頭のカバは、牧場の池に置き去りにされてしまいました。

それ以来、自由になったカバは推定80〜100頭にまで増加し、国の川へと流れ込んだのです。

当然、「麻薬王のカバたち」は生態系を破壊する「外来種の増加」と見なされてきました。

しかし、最近の研究によって、「麻薬王のカバたち」がその地域の生態系を数千年前の状態へと復元させていることが明らかになりました。

数千年前、その地域では「ある草食動物」が絶滅し、食物連鎖・生態系に影響がでました。

しかし、連れてこられたカバたちが「絶滅した草食動物」と同じ働きをしたため、その地域の生態系が元の状態へと戻ったのです。

この出来事に関して、ローワン氏は、「連れてこられた草食動物は、絶滅動物と生態学的に完全一致する場合もあるし、性質の一部を有している場合もある」と述べています。

つまり、「絶滅生物の代理」として、一種もしくは複数の生物を導入することで、当時の生態系と似た状態を作りだすことができるのです。

生態系を回復・維持できるなら、生態系破壊によって生じる連鎖的な絶滅を止めることができるでしょう。

現在の外来種は既に「代理」を果たしていた?

「絶滅生物の代理」計画のために、研究者たちは、更新世後期(12万6000年前〜1万1700年前)の絶滅以前から現在に至るまでの草食動物種の主要な生態学的特徴(大きさ、食事、生息地)を比較しました。

これにより、世界の生態系を定量化して比較できるようになりました。

そして、この結果は、世界の「生態系と変化」に関して想定外の側面も明らかにしました。

というのも、導入された外来種たちは、既に世界を絶滅種がいた時代と似た環境にしていたのです。

これは、「既に導入されてきた外来種(草食動物に限る)」の64%が、その地域の在来種よりも絶滅種によく似ていることが原因です。

この事実は、現在の外来種問題に新たな視点を与えるものとなりました。

続きはソースで
https://nazology.net/archives/55058
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