超伝導体は、電気を抵抗なしに伝導できる特殊な性質を持っており、医療用の超伝導MRIやリニアモーターカーにも用いられています。

今回の発見により、この超伝導体が宇宙空間で自然に形成されることがわかりました。

しかし、なぜ隕石の中に超伝導体が入っていたのでしょうか?

研究内容はアメリカ空軍の支援のもと、カリフォルニア大学サンディエゴ校のジェームズ・ワンプラー氏らによってまとめられ、3月23日に学術雑誌「PANS」に掲載されました。

隕石に含まれていた超伝導体

これまでワンプラー氏をはじめとする研究チームは、アメリカ空軍から支援を受けて、あらゆる物体を調査し、その物体に超伝導体としての性質があるかどうかを探索してきました。

調査の原動力となったのは、彼らが6年前に開発した磁場変調マイクロ波分光法(MFMMS)と呼ばれる技術です。

近年の研究によって、物体が導体から超伝導体に変化するときには、マイクロ波の取り込み方が変化することが知られています。

研究チームが開発した磁場変調マイクロ波分光法(MFMMS)は、マイクロ波の吸収変化を感知して、調査対象が超伝導体であるかを確かめることができるのです。

研究チームの各員が様々な材料を調査するなか、ワンプラー氏は隕石に目をつけました。

隕石は地球外環境で生成されるために、内部に予想もできない物質が含まれている可能性があるからです。

しかし隕石には構成物質によって数多くの種類が知られており、調査はいきなり難航しました。

何百という隕石を調べたものの、超伝導体は発見されたかったのです。

そこでワンプラー氏はランダムな調査をやめ、隕石を2つの異なる基準で選定にかけ、それぞれで理想的な隕石を探し出しました。

一つ目の基準は、惑星のコアに由来する鉄やニッケルを含んだ隕石であり、選ばれたのは100年前(1911年)にオーストラリアに落下した「マンドラビラ」と呼ばれる隕石です。

そしてもう一つは、惑星の表面にありながら、巨大隕石の落下により宇宙空間に飛び出た隕石で、こちらはGRA 95205とナンバリングされたカンラン石とピジョン鉱石といった地殻成分を含む隕石です。

マンドラビラは砕かれた惑星の中心から、そしてGRA 95205は天体衝突によって、それそれ宇宙空間に放出されました。

どちらも初期太陽系における惑星形成のダイナミックな変化(高温高圧・巨大な衝撃など)によって形成された隕石であり、現在の環境では得難いものです。

ワンプラー氏が2つを調べたところ、なんと今度はどちらの隕石サンプルからも超伝導体の反応が検出されました。

詳しく分析してみるとサンプルには共通して「イリジウム・鉛・スズ」の合金が含まれていることがわかりました。

しかし当初、研究チーム内の他の研究者の多くは、ワンプラー氏の結果に懐疑的でした。

イリジウム・鉛・スズの合金は地球上で人工的に生成される超伝導体の一つとして作られており、サンプルが汚染されている(または捏造されている)可能性があったからです。

そこでそこで研究チームは第三者である、ロングアイランドのブルックヘブン国立研究所の研究者に再確認するよう依頼しました。

結果、ワンプラー氏が発見した超伝導体には人工的な痕跡はなく、完全に宇宙に由来することが明らかになったのです。

今後の調査によって、宇宙空間に存在する多様な物質から、超伝導体が発見される可能性があります。

そうなれば、宇宙は超伝導体の宝庫と言えるようになるかもしれません。

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