「軍事研究に当たらない」となぜ言い切れるのか 筑波大学長が「安全保障研究」で初めて説明も残る疑問
吉田卓矢
毎日新聞 2020年3月27日 06時30分(最終更新 3月27日 06時30分)
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記者の質問に答える筑波大の永田恭介学長=茨城県つくば市で2020年3月26日午後3時35分、吉田卓矢撮影

 「軍事研究を行わない」との基本方針を示した筑波大が防衛装備庁の研究助成制度「安全保障技術研究推進制度」に応募して採択された問題で、永田恭介学長は26日、記者会見し、初めて考えを明らかにした。
「研究は軍事研究に当たらない」「防衛(に関する研究)はかまわない」などと説明し、学内外で上がる批判をかわしたが、そこまで言い切れる根拠がどこにあるのだろうか、疑問が残った。【吉田卓矢/統合デジタル取材センター】

 安全保障技術研究推進制度は、防衛分野への応用を期待して、大学や企業などの先端研究を公募・資金助成する制度として2015年度に始まった。予算規模は、15年度は3億円だったが、17年度に100億円を超えた。研究規模は現在、大規模なタイプS(5年で最大20億円)と、より小規模なタイプA(3年で最大3900万円)、タイプC(3年で最大1300万円)の3種類ある。外部有識者が審査し、採択されれば、防衛装備庁と委託契約を結び、研究を行う。

 筑波大は19年秋、学内での審査を経て、この制度の19年度の追加募集で大規模なタイプSに応募して、12月に採択された。次世代の炭素素材、カーボンナノチューブを使った衝撃に強い素材の開発とメカニズムの解明で、2企業と共同で行うといった研究内容だった。筑波大は、18年12月に「軍事研究は行わない」との基本方針を公表していたこともあり、研究者や市民でつくる「軍学共同反対連絡会」(共同代表・池内了名古屋大名誉教授ら)などが「基本方針に矛盾している」などと反発していた。

 永田学長は会見で、審査は学内に設置した審査委員会を10月に開き、基本方針に基づき、人道に反していないか▽研究者の自主性・自律性が尊重されているか▽研究の公開性が担保されているか▽学術の健全な発展が阻害されないか――の4項目について検討したことを明らかにした。4項目が守られなければ、直ちに中止するとの条件も付けたという。

 一方、審査委のメンバーの内訳については「研究を途中で中止させることもできる内容となっており、外部から圧力を受ける可能性も考えられる」として明らかにしなかった。ただ、自身については「基本的に全ての委員会の長だ」と述べ、審査委の意思決定に関わったことを明らかにした。

 審査委員会の決定について永田学長は「軍事研究をやらないという基本方針は変わっていない」と前置きした上で、「(今回の…

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