新型コロナ対策の拠点となるべく新設された大学病院で、希少な病床のひとつが、「本来入院できない患者」のために充てられた。その人物は、首相直轄の諮問委員会メンバーにして、公衆衛生学の権威。発症から検査、そして治療まで、ルールを逸脱して進んだ入院劇──。

◆「まさか、先生が」

 新型コロナウイルスの国内流入を防ぐ“水際作戦”で厳戒態勢を敷く成田空港のそばに、3月16日、国の第一種感染症指定医療機関「国際医療福祉大学成田病院」(642床)が開業した。

 同病院は安倍政権が推進する国家戦略特区制度(医療特区)で新設された国際医療福祉大学医学部の附属病院。同大の「国際臨床感染症センター」の診療部門として強力な感染症にも対応できる感染症専門病床を備え、外国人患者の診療・入院をサポートするために医療通訳のスタッフもいる。まさに成田空港の“水際作戦”に欠かせない拠点病院といっていい。

 厚労省は欧米などからの帰国者、入国者の感染が増えていることから、4月1日の予定だった付属病院開設の前倒しを強く要請し、病院側は感染症科を先行開業して642床のうち48床の個室フロア(減圧室12床)で新型コロナの患者に対応することにした。異例の要請を行なった厚労省の判断も、それに応じた大学病院側も見事な対応だったといえるだろう。

 ところが、開業早々、ハプニングに見舞われる。3月19日、東京から意外な患者が運ばれてきたのだ。

「まさか、先生が」。慌ただしく準備に追われていた医師、看護師らは驚いた。

 同大学の看板教授で、著名な公衆衛生学者として知られるA教授だった。A教授は安倍首相が議長を務める未来投資会議の医療・介護分野の副会長で、いわば首相の医療ブレーン。医学界での知名度は高く、全国を飛び回って高齢化社会の医療体制などについて講演している人物だ。大学関係者が証言する。

「大学の看板教授が入院してきたからびっくりです。A教授は発熱の自覚症状が出るまで医師グループとの勉強会や学会などへの出席のために新幹線で全国を飛び回っており、接触者は数え切れない。多くは研究者、医師、保健所など医療関係者です。大学内では教授の陽性(感染)を公表すると影響が大きすぎるのではないかと議論になった」

 海外からの帰国者、入国者の感染者を収容するために前倒し開業した専門病床が、同大学の教授によって使われることになったのだ。

◆クラスター発生の可能性

 国際医療福祉大学は3月21日付でホームページに「教員2名」の感染が判明したことを発表した。

〈本学に所属する感染症や公衆衛生の専門医、感染管理認定看護師らの指導のもと、当該教員2人と接触した教職員に対して、健康観察を実施していますが、現時点では発熱、咳などの症状が出たものはおりません。所轄保健所と連携を図り、濃厚接触者の特定を行いましたが、現時点では学生ならびに教職員には濃厚接触者がいないことが確認されております〉

 しかし、「濃厚接触者がいない」という説明には違和感がある。感染したもう1人の教員はA教授の共同研究者である同僚のB教授で、2人はともに東京・赤坂キャンパスにある同大大学院医学研究科で教鞭をとっている。B教授の携帯に電話が繋がった。

「新型コロナで入院中です。熱があって、話すのもたいへん。今日が入院何日目かもわからないんだよ」。苦しそうな声だった。

──いま、千葉の成田病院ですか?

「うん」

──A先生といっしょに。

「そうそう」

──どこで感染したのか。A先生経由?

「ぜんぜん、よくわからないんだ」

 とぎれとぎれにそこまで答えてくれた

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https://news.livedoor.com/lite/article_detail/18046738/
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