新型コロナウイルスの感染拡大を巡り、会員制交流サイト(SNS)などで流布した感染予防策などの誤情報。一見関係のないトイレットペーパーがデマから全国的な品薄になる事態も生じた。飛び交う情報にどう対処すればいいのだろう。大阪大の三浦麻子教授(社会心理学)への取材をもとに、Q&A形式でまとめた。(竹内 章)

 −未知なものに不安を覚えるのは当然の反応か。

 感染症流行に伴う混乱は、地震などの自然災害と同様で、パニック的な反応は繰り返し観察されている。新型コロナのように目に見えない不安に対し、「感染したくない」という心理が強く働くと、見えている誰か、例えば特定の国家やクラスターが生じたとされる集団を排斥・差別するといった極端な行動にすらつながる場合もある。

 −「26度のお湯でウイルスが死滅」「トイレットペーパーが不足する」というデマが流れた。

 不確かで状況が変化する問題に対し、不安や恐怖にかられ、身近なリスクへの情報を集めようとするのは自然な振る舞いだ。そうした中で、自分の予想と合致した情報に接すると、真偽の検証を忘れて受け止めてしまうことも多い。

 −トイレットペーパーについては業界団体が「供給は十分足りている」と異例の呼びかけをした。

 ほとんどの人は「生産がストップする」とは本気で信じていなかっただろう。ただ「私はデマに踊らされないが、周囲の人はだまされるだろう」と考えた人が先回りして購入に走り、SNSで広く共有され、品薄を招いたのではないか。

 −デマを信じたわけではないのに皮肉だ。

 社会心理学でいう「多元的無知」。よく「空気を読む」とか「忖度(そんたく)」とか言われるものと同じ。一人一人は「なくなるわけがないのに買い占めなんて」と思っていたとしても、「きっとみんなそう思い込んで買い占めるだろう」「そうなるとほんとに品薄になってしまう」と思った結果、買い占めることの方が「当たり前」になってしまった。

 −対策は。

 人は冷静でいられない状態では思わぬミスを犯すということを自覚する。トイレットペーパーをたくさん買わないよう自制を求めることも必要だが、たくさん買いにくいシステムを導入し、消費者にそれに合わせて行動してもらうことも重要。「人間は時に愚かな動物」という自覚があれば、少しはブレーキになる。

 −SNSでデマが拡散した。

 SNSは主観や感情を伝える「お気持ち」メディア。リスク情報が流れてくると、「私も怖い」という個人的な思いを共有(ツイッターならリツイート)したくなりがちだが、「この情報は大丈夫か?」と疑ってかかってほしい。

 −真偽の判断が難しい情報もある。

 1次情報でないもの、自分で判別できない情報はリレーしないこと。情報の氾濫にストレスを感じている人はアクセスを控える。ツイッターならばミュートするなど情報そのものに触れないようにしてほしい。

 −“コロナ疲れ”という言葉も聞く。

 疲れるのも慣れるのもまだ早いのかもしれない。長期間、人との接触を控えた生活を強いられる中で、精神的な健康を保つため、アメリカ心理学会が市民向けにポイントをまとめた。日本心理学会が日本語訳をhttps://psych.or.jp/about/Keeping_Your_Distance_to_Stay_Safe_jp/に掲載している。ニュースやソーシャルメディアへの接し方や他者とのつながりをまとめているので、役立ててほしい。


【デマ対策まとめ】

(1)情報を共有する前にデマではないかと懐疑的に考える

(2)もし共有した情報がデマだと気づいたら取り消して訂正する

(3)世界保健機関(WHO)や厚生労働省の情報を参考にする

4/1(水) 11:42配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200401-00000015-kobenext-soci
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