https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200402-00000507-san-hlth

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、不要不急の場合は自粛を求められていることから、
外出を控える動きが広がっている。ところが高齢者の場合、家でじっとすることが別のリスクを招くこともあるという。
高齢者医療の専門家らは、「なるべく動いて」と注意を促す。

おばあちゃんの原宿と呼ばれる東京・巣鴨。巣鴨地蔵通り商店街に海苔(のり)店を構える矢崎晴久さん(76)は、
「例年よりも5割ほど人出が減ったね」と、外出控えの実感を漏らす。通りを歩いていた東京都北区の女性(85)も、
「万が一、うつっちゃうといけないから買い物を週に2回から1回に減らした。歩かなきゃとは思うけれど…
習い事も軒並みお休みになったし、前より外に出なくなったわね」と言った。

さらに、外出機会の減少は、介護サービスを受けている人たちにも及んでいる、という。

名古屋や千葉・市川などで新型コロナウイルスの感染が報じられたこともあり、デイサービスなど通所型の介護施設では
「通い控え」が生じているという。

「2月後半以降、通所者が3〜4割減った」と話すのは、デイサービスリハステージ上新庄(大阪)の職員、新原航季さん(28)。
「家族に止められている人もいれば、老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)が感染を恐れて、
居住者の外出を禁止したため、通えなくなった人もいる」という。来所時には3時間の運動(機能訓練)を行っていた高齢者が、
外出や訓練ができなくなる。「お休みの間、部屋から出ないで過ごす人もいるかもしれない。体が弱ってしまわないか。
代替策を考えなければ」と心配している。

それまで外出していた高齢者が家の中で過ごす時間が長くなると、いわゆる「生活不活発化」とも呼ばれる心身機能の低下を
招く恐れがあると専門家は言う。

「長期間、家の中でじっと過ごすと身体活動量が減り、結果、筋肉が衰える。また血行も悪くなるなど、さまざまなリスクがある」
と話すのは、東京都健康長寿医療センター研究所の北村明彦研究部長だ。

特に下肢の筋肉が落ちやすく、やがて歩きにくさを感じたり、転倒しやすくなってしまう恐れがある。

さらに北村さんが指摘するのは、心理面、認知機能面への影響だ。「動かないと食欲がなくなり、気力も落ちる。
また人と話す機会も減ると、認知機能的にもよくない。(自粛ムードがおさまっても)以前のように外出したいと
思えなくなる恐れもある」と指摘。

「家の中でもできる限り動くようにしてほしい。また人混みを避けながら、近所の公園まで散歩するのもいいでしょう」
と北村さんは話している。

〈おうち運動で脚の筋力保つ〉

外出自粛も、せめて自宅で運動を−。日本理学療法士協会は3月、「新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛による
生活不活発病の予防について」として、家の中で自分でできる運動の方法などを公開した。特徴はその人の足腰の状況に応じて、
異なる運動を紹介している点だ。「脚上げも、立ってできない人は座ってすればいい」と同協会の大工谷新一専務理事。
「要介護なのか、元気なのかでできる運動は異なる。筋肉が落ちないようにしたり、柔軟性を保つことが大事だ」と話している。