自民、公明両党は31日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急経済対策の提言を政府に提出しました。今後政府が検討を本格化させますが、目玉となるのは人々にお金を直接配る政策です。かつては効果が疑問視され、「ばらまき」との批判も受けたのに再び採用するのはなぜでしょうか。 (渥美龍太)

 Q 過去にお金を配ったことはあるのですか。

 A リーマン・ショック後の二〇〇九年、一万二千円または二万円の「定額給付金」を全国民に配りました。一九九九年には、一定の条件を満たした人に二万円分の「地域振興券」を配ったこともあります。いずれも消費の押し上げ効果は、配った額の三割ほどしかありませんでした。定額給付金の時に首相だった麻生太郎財務相は三月の記者会見で「あまり効果がなかった」と振り返っています。

 Q それでもまたやるのはなぜですか。

 A 政策の目的が違うからです。政府が経済活動の自粛を要請している今、積極的な消費を促す意味合いは薄く、狙いは生活保障です。飲食業などの中小零細企業は売り上げが急減、生活に困る人が続出すると予想されているからです。政府内にも「貯蓄に回っても構わない。生活資金にはなる」(経済官庁幹部)との割り切りがあります。

 Q 誰に配るのですか。

 A そこが焦点です。政府は定額給付金のように一律では配らない方針で、線引きが必要になります。感染拡大の影響で所得が減っている人を把握しつつ、迅速にお金を届けなければなりません。

 自民党の提言はクーポン発行などを含めて総額十兆円超、5%分の消費税減税に相当するという内容で、直接給付は与野党のアピール合戦の様相を呈しています。ただ「制度設計によっては相当不公平感が出る難しい政策」(エコノミスト)であることは念頭に置いた方が良さそうです。

2020年4月1日
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