新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東北の観光地ではゴールデンウイーク(GW)期間前後に予定されている祭りなどのイベントが相次いで中止になった。宿泊施設の予約キャンセルも止まらず、観光業界への打撃は大きい。GWから初夏にかけてのイベントは夏祭りに向けた前哨戦とされており、先行きが見通せない状況に関係者からは不安の声が漏れる。


秋田県仙北市は4月20日〜5月5日に規模を縮小し開催予定だった「角館の桜まつり」の中止を決めた。新型コロナウイルスの感染が広がっているためだ。武家屋敷通りの歩行者天国に加え、出店や特設ステージ、イベントなどは実施しない。桜まつりは2019年に140万人が訪れ、市全体の観光客数の3割を占める大イベント。「飲食店や宿泊施設への打撃は大きい」(市観光課)。

青森商工会議所が中心となって06年からGW期間中の青森市中心商店街を盛り上げるため、5月5日に開いていた「AOMORI春フェスティバル」も中止。同フェスは中心商店街の道路を通行止めにして、「ねぶた」と「よさこい」が一堂に会する総踊りがメインのイベント。19年には市民や観光客ら約9万人を集め、経済効果が大きい。青森商工会議所は「中止は苦渋の決断」とする。

岩手県では「みちのく三大桜名所」の一つとされる北上展勝地(北上市)で4月15日から5月6日までの開催を予定していた「北上展勝地さくらまつり」や、源頼朝に追われた義経一行を奥州藤原氏が迎える様子を再現するイベントがメインの「春の藤原まつり」(平泉町、5月1〜5日)などの中止が相次いで決まった。「経済的損失は大きいが、毎日何十台のバスが会場に来ると、感染の懸念が高まる。中止はやむを得ない」(北上市)という。

山形県では武将にふんした人が駒代わりに動く天童市の「人間将棋」(4月18〜19日)や、毎年30万人前後が訪れる米沢市の「米沢上杉まつり」(4月29日〜5月3日)など著名な祭りの中止や延期が相次ぎ決まった。福島県郡山市で4月29日に予定されていた郡山シティーマラソン大会も中止。すでに応募が締め切られ、約7500人の参加が決まっていた。今年で27回目となる人気イベントで中止は11年の東日本大震災の直後以来だ。

宮城県では仙台の初夏の風物詩となっている「仙台・青葉まつり」の中止が決まった。2日間に90万人を集めるイベントは宿泊業界にとって影響が大きい。宮城県ホテル旅館生活衛生同業組合(仙台市)によると、組合に加盟する宿泊施設のGWの予約状況は「相当悪い。前年比8割減の施設もある」(担当者)。

福島県旅館ホテル生活衛生同業組合(福島市)によると、県内の旅館やホテルの2〜4月の宿泊予約のキャンセル(2月末時点)は少なくとも計約7万7000泊。天童温泉(天童市)では1週間連続の休館や客が少ない時は近隣の旅館に移ってもらい休館にする施設も。ただ「休館があかるみになると、さらに客離れを招く」と警戒する。

今後は夏のイベントについても判断を迫られそうだ。山形商工会議所の矢野秀弥会頭は東北各県が順番に開く「東北絆まつり」を延期するよう関係者に提案を始めた。今年は5月30〜31日に山形市内で開催の予定。東北の夏祭りを盛り上げる前哨戦でもあるが、「今の状況では協賛金を集めるのも難しい」(矢野会頭)と頭を悩ませている。

2020/4/2 17:00
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