https://mainichi.jp/articles/20200403/k00/00m/040/311000c

奈良県大和高田市教育委員会の元幹部ら9人が、市立小学校に通っていた児童の親族から不当な要求を受け続け、
計1億円超を私的に支払わされていた。捜査関係者が明らかにした。県警高田署は2019年10月以降、
親族で中古車販売業の男(45)=公判中=を恐喝などの容疑で逮捕。奈良地検葛城支部が、
9人のうち5人の約1100万円の被害などについて起訴している。

捜査関係者などによると、男は孫が市内の小学校に入学した7年ほど前から学校側にクレームをつけるようになった。
因縁をつけて別の児童を転校させたり、その対応に不備があったとして校長に土下座で謝罪させたりしたという。

さらにこの対応に加わった市教委幹部らも威圧するようになり、幹部やOBらと「美絆(うるは)会」と呼ばれる任意団体を結成。
メンバーら9人に言いがかりをつけるなどし、計1億円を超える現金を支払わせていたという。

起訴状などによると、男は17年6月〜19年10月、市内のカラオケ店や経営する会社事務所に幹部らを呼び付けて不当な要求をし続けた。
ワインをこぼしてTシャツが汚れたとして50万円を、居眠りをしたと因縁をつけて100万円を脅し取るなど、12回にわたり
計約1128万円を5人に支払わせたとされる。

脅し取った現金で、自身の中古車販売店を兼ねた美絆会の事務所を設置。その活動名目で、1人当たり月約5万円の現金も提供させていたという。
男は公判で起訴内容を認めており、検察側は「現金は遊興費に使っていた」と指摘した。県警は被害届が出ていないケースを含め、
計1億円超が脅し取られたとみている。

幹部らが退職後に現金を提供させられるケースが多かったという。被害者の一人は「言いがかりばかりだったが、
断れば殴られて土下座させられる。公務員を狙ったのは退職金があるからだと思う」と話した。

男の要求で転校させられた児童の父親(40)は毎日新聞の取材に、「市教委の幹部が並ぶ前で(男に)怒鳴られても誰も助けてくれず、
絶望するしかなかった」と明かした。納得できなかったが、「校長から『教職員も疲れ切ってしまっている』と説得されて泣く泣く受け入れた」と話した。

◇教職員が気軽に相談できる体制づくりを

教育現場での暴力に詳しい古川純平弁護士(大阪弁護士会)の話 「なぜ断れなかったのか」と思うかもしれないが、
教育現場では、どうしても子どもとの関係を考えなければならない特殊性があり、明確に拒絶できない場合も少なくない。
今回は、教職員らが小さな我慢を続けるうちに不当な要求がエスカレートしたケースだと言える。教職員が気軽に相談できる体制づくりが必要だろう。


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