県内で六日連続で新型コロナウイルス感染者が確認され、感染拡大の不安が広がる中、市町村や県民からは感染者に関する詳細、迅速な情報提供を県に求める声が高まっている。県内最多の六人の感染者が確認されている南相馬市は五日、情報が少ない現状を考慮して小中学校を六日から三日間の「自由登校」とする異例の措置を決定するとともに、県に情報公開の充実を要望した。一方、県はプライバシー保護の観点などから対応に苦慮している。

■南相馬、6日から3日間自由登校

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、市内の小中学校十八校の三日間の自由登校を決めた南相馬市教委。三日間は通常授業再開までの準備期間に位置付ける。大和田博行教育長は「情報が少なく実態をつかめない。まずは緩やかなスタートを切り、感染の動きを見ながら通常の授業再開を目指すほかない」と語った。

 市教委は県相双保健所の「児童生徒と教職員に濃厚接触者がいない」との調査結果を受けて「感染リスクは低い」と、県内の他市町村と同じ六日の学校再開が妥当と判断した。ただ、感染者の詳しい情報や感染拡大の行方が不透明なため、準備期間を設ける“折衷案”を選択した。

 自由登校では、出欠にかかわらず復習プリントで対応する。感染が拡大しなければ、九日から通常体制に戻す予定。小学三年の長男を持つ南相馬市原町区の主婦東海林希望(しょうじ・のぞみ)さん(35)は五日午後四時頃に自由登校を知らせるメールを受け取った。「感染状況がよく分からず、保護者としても登校させていいか判断が難しい。落ち着くまで休みにしてもいいのでは」と不安げだ。

 市は五日の要望で、市民の適切な行動につなげるための情報公開を県に求めた。感染拡大の初期段階には情報が極めて重要と指摘、個人情報の保護に配慮した上で、感染者の症状や行動歴、移動手段、生活圏など、市民が対策を講じる上で必要な事項の積極発信を要求した。

 「判断材料が少なすぎる。授業再開時期を決められない」。四日に初めて感染者が確認された矢吹町の担当者も不安を隠さない。町は五日、町内の小中学校五校の入学式と始業式は予定通り六日に行い、七日からの授業再開については感染者の行動歴など県の詳細な調査結果を踏まえて改めて判断する方針を決めた。しかし、五日午後五時時点で県からの詳細な情報はない。学校関係以外でも、首都圏への移動自粛要請など町としての具体策の検討も進まないと頭を悩ませる

二日に初めての感染者が確認された須賀川市では県が発表した情報の少なさから問い合わせが市に相次いだ。

 小学三年生の長女と幼稚園年長組の長男を育てる福島市の会社員鈴木美和さん(41)は「子どもを守るため、知りたいのは感染者が感染後にどこで過ごしていたかだ」と訴えた。

■県、プライバシー保護に配慮

 南相馬市の情報公開に関する要望について、県の戸田光昭保健福祉部長は五日、福島民報社などの取材に「積極的な情報発信で保護者らの不安を取り除きたいが、感染者や関係する事業所などの了解を得た上で進めるしかない」と述べるにとどまった。

 感染者の行動歴などの情報を公開する対象や範囲に関し、県は新たな感染拡大の可能性を見極めて判断しているという。例えば、感染者が陽性判明前にマスクを着けずに外出するなど、周囲への感染リスクが高いと判断した場合には公開する範囲を拡大する。ただ、個人のプライバシーに十分配慮するとし、感染者が訪れた具体的な店舗名などは「事業者との相談が必要」との立場を取っており、実際にどこまで公表されるかは不透明だ。

4/6(月) 9:35配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200406-00000007-fminpo-l07
https://lpt.c.yimg.jp/amd/20200406-00000007-fminpo-000-view.jpg