新型コロナウイルスの蔓延で、安倍晋三首相は「緊急事態宣言」を発令した。改正新型インフルエンザ等対策特別措置法によるもので、東京をはじめ7都府県が対象となった。効力は4月7日から5月6日までの1カ月間としている。

では、宣言の前後で国民の生活はどう変わっただろうか。

まるで、中国の武漢市やフランスのパリのように、東京も外出が禁止になる「ロックダウン」すなわち都市封鎖、首都封鎖になると想像した人たちも少なくなかったはずだ。

しかし、実際は「緊急事態宣言」によっても、国民に外出の自粛を要請できるだけで、禁止にもならなければ、罰則もない。宣言前の事情とは変わっていない。ただ、国民の意識が変わったくらいだ。

■ まるで東京の都市封鎖が可能なような口ぶりだったが・・・

先月の下旬には、SNSを通じて「4月1日から東京がロックダウンになる」という偽の情報が拡散した。

その1日には、安倍首相が参院決算委員会で緊急事態宣言についてわざわざ「さまざまな要請をさせていただくことになるかもしれないが、フランスなどで行っているものとは性格が違う」と言及しているほどだ。国会議員でもよくわかっていない輩がいたようだ。

そもそも、こうしたデマを喚起させた原因は、小池百合子東京都知事にある。

3月23日の記者会見で、小池都知事ははっきりこう発言している。

「今後の推移によりましては、都市の封鎖、いわゆるロックダウンなど、強力な措置をとらざるを得ない状況が出てくる可能性があります」

まるで東京の封鎖が知事の権限で可能であるかのような響きだった。だが、そこに法的根拠はまったくない。日本では都市封鎖なんてできないのだ。

つまり、この段階で、できもしないことを言って、東京都民の危機意識を煽ったのだ。脅した、と言ってもいい。

ここから「ロックダウン」という言葉が日本人の間にインプットされ、諸外国のような都市封鎖が起こるという印象を植え付けたはずだ。

■ 「都市封鎖」の大本営発表にほいほい乗っかるマスコミ

ありもしないことを言って、相手を脅す。強迫の構図で相手の心を奪ってコントロールする。それはいわゆるカルト宗教の手法と同じだ。

オウム真理教の教祖の麻原彰晃(本名・松本智津夫)は、20世紀の終わりに「ハルマゲドンが来る」と予言して、それに怯えた若者を絡め取った。あるいは個人的に「地獄に堕ちる」と相手を脅して修行に駆り立て、心を支配した。その顛末は語るまでもない。

「ロックダウン」発言をした小池都知事は、統治者というよりも、むしろ、数多あるカルト系新興宗教の教祖様に近い。

ところが、このロックダウンという響きが斬新だったのか、メディアもこの言葉を使いはじめる。首都封鎖はあるのか、と言ったような、これまた掻き立てるような伝え方をしたところもあった。そこに法的根拠もなければ、実現の裏付けもないのに。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200409-00060090-jbpressz-pol
4/9(木) 16:00配信