亡くなった志村けんさんに喫煙歴があったことから、「たばこ」と新型コロナウイルスとの関連性に注目が集まっている。重症化が報じられている野球解説者の梨田昌孝氏もかつてはたばこを吸っていたという。

 2人のケースとの因果関係は不明だが、WHO(世界保健機関)のホームページが「やってはいけないこと」のトップに喫煙を挙げるなど、たばこは高齢や持病と並び、重症化の要因と目されている。

 たばこの害に詳しい大阪国際がんセンターがん対策センター疫学統計部の田淵貴大副部長はこう語る。

「実は、中国・武漢で最初に亡くなった2人について、“一見健康そうだったが、実は長い間、喫煙していて、肺が弱っていた可能性がある”と伝えられています」

 厚生労働省に新型コロナとたばこの関連性を示す報告書を提出した日本禁煙学会の作田学理事長は、根拠に中国からの論文を挙げる。

「武漢で入院した78人の予後と悪化因子の関連性を調べると、最大の要素が喫煙で、喫煙者は非喫煙者の14倍、悪化するリスクが高かった。高齢のリスクは8.5倍程度だったので、どれだけたばこのリスクが高いかわかります。喘息などの持病がない、元気な若者が重症化する背景に、喫煙が関係している可能性が高い」
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 なぜ、喫煙が新型コロナ感染症を悪化させるのか。前出の田淵副部長が挙げるのは、たばこによる肺の機能低下と、ウイルスに感染しやすくなるという2点だ。

「長い間、たばこを吸っていると肺の組織が破壊されてしまう。呼吸機能が落ちた状態でウイルスに感染すると、肺のダメージが一気に進みやすいのです」

 一方、ウイルスに感染しやすいしくみはこうだ。

「ウイルスは細菌と違い自分では増えられないので、私たちの細胞内に入り込んで増殖します。たばこを吸っている人では、ウイルスが細胞内に入り込む受容体(入り口)の数が多いようなのです。またたばこに含まれるニコチンは免疫機能を低下させます」

 このことは、インフルエンザやSARS(重症急性呼吸器症候群)などのウイルスを用いた研究でも明らかになっている。ただし、ニコチンの害は禁煙すれば数日で改善するという。

 4月1日施行の「改正健康増進法」では、屋内施設での喫煙が原則、禁止となった。だが、大きな飲食店やホテルでは、屋内でも専用の喫煙所で吸える。

「今後危惧されるのは、こうした喫煙所。感染しやすい人たちが“三密”に集まり、クラスターが起こる可能性がある」(田淵副部長)

 これを機に禁煙してみてはどうだろうか。(本誌・山内リカ)

※週刊朝日  2020年4月17日号

4/10(金) 11:04
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