緊急事態宣言の翌日、東京・銀座を車で通った。日本随一の繁華街、銀座四丁目交差点に鎮座する和光、三越といった老舗デパートをはじめ、有名店のシャッターがことごとく下りている。年末年始以外には見られない「異景」だった。

 ほんの2カ月前まで、外国人観光客であふれかえっていた通りには、人影もまばら。それでも付近の職場で働く人たちか、マスクを着け早足で歩く人の姿がちらほらとみられる。眺めていると、不思議な感慨が湧いてきた。

 「強制力」など行使せずとも、警察官が棒を振り回して市民を追い立てずとも、「総理の一声」で、これだけ見事に営業や外出を「自粛」する国民は、世界のどこにもいまい。国民が本気になりさえすれば、わが国に「ロックダウン(都市封鎖)」など不要であるかのようだ。

 スムーズ過ぎるとも見える、この「自粛」移行の裏に、実は、日本流「根回し」があったとも聞く。臨時休業を求めたいが、影響の大きい大規模商業施設や、反対に「自粛」期間中も、動いてもらわねばならない業種には、行政から事前の照会がされていた。大混乱がなかったのはそのためもあろう。

 「このペースで感染拡大が続けば、2週間後には1万人、1カ月後には8万人を超えることとなります。しかし、(中略)私たち全員が(中略)1カ月間、人と人との接触の機会を最低7割、極力8割削減することができれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができます」

 ■首相もテレワークを フェイク報道には「電波使用停止」検討を

 安倍晋三首相が7日夜に述べたこのくだりで、賢明な国民はすべてを悟った。

筆者は、緊急事態を宣言した首相のスピーチを高く評価する。一連の新型コロナ関連の発信の中では最も優れていた。理由は5点ある。

 (1)冒頭で、最前線で戦う医療関係者への謝意を丁寧に述べた(2)従来の曖昧な表現ではなく、リスクを数字で明示した(3)「ロックダウンはしない」と明言し(4)しかし、全国民が「行動変容」を迫られる事態だと言って、対応策を数字で明示した(5)医療資源を守るべく確保した、病院外の病床の実数を明らかにし、自衛隊投入を決めたと発表した−。

 これで多くの国民は腹をくくったのだ。権力と国民がいたずらに対立せず、危機には自然と一つになって冷静に立ち向かう。これが、わが国の特質の一つだが、なぜか相いれない人たちも国内にいる。

 例えば、国民民主党の玉木雄一郎代表は、いまさら「ロックダウンを可能にする法案」を提出するという。「国会サボり」とのそしりを免れたいだけの自衛策か、と思ってしまうが、このチグハグさにはあぜんとする。こうした一部野党のほか、緊急事態宣言の翌朝から昼のテレビのワイドショーもひどかった。

 安倍首相のスピーチについて、「強い言葉がない」「覚悟が見えない」という情緒的でアホな文句のオンパレード。肝心な宣言の中身への論評がない。

 目下、日本最大の難題は、新型コロナと「こんな人たち」につけるクスリがないことだ。

 先週の本コラムで、テレビのフェイク報道への対抗策として、NHKのチャンネルの1つを政府に返還させ、「期間限定・政府専用チャンネル」とすることを提案した。今週はもう一段進んだ、劇薬を提案したい。

 非常時の悪質なフェイク報道には「電波使用停止」などのペナルティーを検討すべきである。

 伝え手の一人として筆者にじくじたる思いもあるが、それほど今の地上波テレビはひどい。

 さらにもう一つ、安倍首相に、ご自身の「週イチ・テレワーク実現」を提案したい。一部野党やメディアは大騒ぎするだろうが、敢然と無視していただきたい。国民にテレワークの範を垂れる意義は大きく、感染症での死者と経済死者を一人でも少なくする闘いはまだ始まったばかりだ。トップが自身の感染リスクを下げ、健康管理をより良くすることがまず大事である。

 そう望む声も全国に少なくないことを付言しておく

夕刊フジ / 2020年4月11日 17時21分 全文はソース元で
https://news.infoseek.co.jp/article/00fujipol2004090002/
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