<トランプ大統領が新型コロナウイルス感染症の治療に大きな期待感を示していた抗マラリア薬の「クロロキン」、ブラジルで臨床試験を実施されていたが......>

抗マラリア薬のひとつ「クロロキン」は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療に効果があるのではないかと注目されてきた。

しかしこのほど、ブラジルの研究チームが臨床試験を実施し、「クロロキンの高用量投与は、安全性に問題があるため、新型コロナウイルス感染症の治療に推奨すべきでない」との見解を明らかにした。この結果をまとめた未査読の研究論文は2020年4月11日、医学分野の査読前論文プラットフォーム「メドアーカイブ」で公開されている。

トランプ大統領「クロロキンがゲームチェンジャーになるかもしれない」
クロロキンは、2005年8月に発表された研研究成果で「SARSコロナウイルスの感染を防止する働きがある」ことが示され、MERSコロナウイルスの治療薬としても有望視されてきた。

米国のトランプ大統領は、2020年3月19日の記者会見で「クロロキンがゲームチェンジャーになるかもしれない」と述べ、新型コロナウイルス感染症の治療でクロロキンに大きな期待感を示した。

アメリカ食品医薬品局(FDA)は、3月28日、新型コロナウイルス感染症で入院中の体重50キロ以上の患者の治療にクロロキンの使用を認める「緊急使用許可(EUA)」を出している。

被験者のうち11名が死亡し、臨床試験は6日目で中止
ブラジルの研究チームは、ブラジル北部マナウスの病院に入院中の新型コロナウイルス感染症患者81名を対象に、クロロキンの効能と安全性を評価する臨床試験を実施。

すべての被験者に抗生物質の「セフトリアキソン」と「アジスロマイシン」を投与したうえで、そのうち41名に、1回600ミリグラムのクロロキンを10日間にわたって1日2回、合わせて12グラムを投与する一方、残りの40名には、1回450ミリグラムのクロロキンを初日のみ1日2回、その後4日間、1日1回、合わせて2.7グラムを投与することにした。しかし、被験者のうち11名が死亡し、臨床試験は6日目で中止された。

6日目までの臨床試験の結果によると、クロロキンを高用量投与したグループで死亡者数がより多く、クロロキンが重症な不整脈を引き起こすおそれがあることもわかった。クロロキンを高用量投与した後に死亡した患者2名は、死亡する前、心室頻拍が認められた。また、低用量投与した患者でも死亡例があることから、低用量投与であれば安全であるとも言い切れない。

感染症を専門領域とする米ヴァンダービルト大学のウィリアム・シャフナー教授は、米メディアCNN
の取材において「高用量投与で毒性が強いのは明らかだが、低用量投与であれば問題ないとはいえない」と指摘している。

フランスでも、ニース大学病院付属パストゥール病院が3月22日、抗マラリア薬のヒドロキシクロロキンを使った新型コロナウイルス感染症治療の臨床試験に着手したが、副作用と心臓損傷のリスクにより直ちにこれを中止した。フランス国家医薬品安全庁(ANSM)では、4月10日、「ヒドロキシクロロキンを投与された新型コロナウイルス感染症患者に心臓への副作用が認められた症例が43例ある」ことを明らかにしている。

全文はソース元で
2020年4月15日(水)19時00分
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/04/post-93145.php
https://www.newsweekjapan.jp/stories/assets_c/2020/04/matuoka20200415aaa-thumb-720xauto-193454.jpg