緊急事態でも「マスコット」を求める国

新型コロナウイルスの影響で、日本で話題の半人半魚の妖怪「アマビエ」。疫病から人々を守るという伝説があることなどから、2月末頃からじわじわとネット上で話題になっている。

3月に入ってからこの「アマビエ」に関するツイートが急増し、ついに今月9日には、厚生労働省が新型コロナ感染拡大防止の啓発マスコットにアマビエを正式採用。

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この日本の「アマビエ(Amabie)」現象は、海外メディアでも奇異の目をもって報じられている。

それは「あひる口のマーメイド」

アマビエについては、『妖怪事典』(村上健司・著)によると弘化3年(1846年)4月中旬と記された「瓦版」に記されている。

その瓦版は現在、京都大学附属図書館に所蔵されており、それによると江戸時代後期の肥後国(現在の熊本県)で「毎夜のように海中に光る物体が出没していたため、役人が赴いたところそれ(アマビエ)が姿を現した」とのこと。

その“光る物体”ことアマビエは、「当年より六年間は諸国で豊作が続くが疫病も流行する」と予言し、「もし疫病が流行ったら私の姿を描き写して人々に見せよ」といって再び海の中へと帰っていったそうだ。

瓦版にはアマビエの挿図が添えられているが、その容姿は半魚人。ロングヘアなので人魚のようにも見えなくはない。ただし、鳥のようなクチバシを持ち、ヒレの形をした3本足で水面上に直立するという奇妙さがある。そんなアマビエを、英紙「ガーディアン」は「あひる口のマーメイド」と表現している。

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その後、新型コロナの感染拡大に伴い、アマビエが言ったとされる「もし疫病が流行ったら私の姿を描き写して人々に見せよ」のメッセージをうけてか、アマビエを自己流にアレンジした作品が次々と投稿されるように。アレンジ作品は、イラストに限らずキャラ弁からラテアート、コスプレまで幅広い。

原書にあたるアマビエの瓦版を所蔵する京都大学附属図書館も先月6日に、「貴重資料デジタルアーカイブで公開されておりますのでご活用ください」と投稿。大きな反響があった。

もっとも、江戸や明治時代のようにせっせと描き写して人に見せたというよりは、ワンクリックのシェアで広がったわけだが、米誌「ニューヨーカー」はこう報じている。

「私の姿をシェアせよ、というアマビエの数世紀前の教えが、ソーシャルメディア時代に新たな重要性を持って、日本国外にも広がっている」

非常事態でも「日本人はキャラクターに心の平穏を求める」?

海外メディアから奇異の目で報じられている理由のひとつは、日本人のパンデミック終息への希望と喚起が、ソーシャル・ディスタンシングでも自主隔離でもなく、真っ先に「妖怪」へと向いたことだろう。

英紙「ガーディアン」は、アマビエが拡散された3月の日本ではまだ、ソーシャル・ディスタンシングもロックダウンも緊急事態宣言も発令されていなかったと述べている。

米誌「ニューヨーカー」もまた、パンデミックの真っ只中でも「日本人はキャラクターに心の平穏を求める」と報じ、その理由を「日本ではキュートなキャラクターが、まるで人口を凌駕するかのごとく増え続けている」ことと関連付けて論じている。

たとえば、と同誌はこう続ける。

「ゴミのポイ捨てを禁止するサインには、擬人化されたゴミのイラストが採用され、薬局では、にんまり笑顔の浣腸のキャラクターが、胃腸障害を抱える人に浣腸薬を勧めている。

また、各都道府県にはそれぞれ「着ぐるみのチアリーダー」が存在し、ミリタリー(自衛隊)ですら、数多のキャラクターを持っている。

さらには、通関手続を行う検疫所にもキャラクターがいる。2019年末というなんとも不吉なタイミングに登場した『クアラン』は、間違いなく世界初の検疫マスコットだろう」

小さな子供だけでなく教養のある大人まで「なぜ、日本人はキャクターを好むのか」については、以前から国内外で論じられてきた。

海外の視点で日本人のキャラクター好きが論じられると、必ずと言っていいほど挙がるのが、どこにでも神がいると信じる「八百万の神」信仰との関係だ。

ご多分に洩れず、ニューヨーカーもこのアマビエ現象と「八百万の神」信仰を関連づけている。

※以下、ソースでお読みください
https://courrier.jp/news/archives/197106/?ate_cookie=1587059944