新型コロナウイルスの感染が拡大する中、疫病を鎮めるとされる熊本ゆかりの妖怪「アマビエ」が人気だ。熊本市西区の仏壇店はアマビエを蒔絵(まきえ)で描いた仏壇を製作し、話題となっている。

 アマビエは半人半魚の姿で、くちばしのような口を持つ。江戸期に熊本県沖の海に現れ、「この先6年は豊作が続くが、もし疫病が流行することがあれば、私の姿を描き写せ」と言い残し、消えたという。当時の瓦版が報じ、人々は妖怪を描いては護符にした。瓦版は現在、京都大付属図書館が保存している。

 アマビエの仏壇を製作したのは熊本市西区の仏壇店「輪島漆器仏壇店」。かつてくまモンの仏壇を作り話題となった。アマビエの仏壇は高さ約1・3メートル、幅90センチ、奥行き約40センチ。松、アスナロ材を使っている。

 瓦版のアマビエの絵と文言を仏壇の扉に蒔絵で描き、「今年は花見もままならなかったので」と螺鈿(らでん)細工で桜の絵も描いた。いずれも鹿児島県南九州市の伝統工芸士が手描きした。

 値段は語呂合わせで567万1818(コロナいやいや)円だが「売るつもりはないんです」と永田幸喜社長(57)。「出歩く人が減り、全体的に暗い雰囲気。仏壇店で何かできないかと考えていた」。そんな時にインターネットでアマビエを知り「地元・熊本の海に現れ、疫病を鎮める妖怪だったので、これを仏壇に描こうと思ったんです」。

 アマビエの仏壇を自身のブログなどでアップすると、お年寄り夫婦が「拝ませてほしい」と花束を持ってきたという。「一人でも多くの人にこの仏壇を見てほしい。そして早くウイルスの感染拡大が終息すれば」と祈る。【山本泰久】

アマビエを蒔絵で描いた仏壇を製作した輪島漆器仏壇店の永田幸喜社長。仏壇の左扉にアマビエが描かれている=熊本市西区
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京都大付属図書館所蔵のアマビエが描かれた瓦版
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