★なぜWHOは中国に牛耳られたのか…? コロナ危機のもう1つの真実
トランプが激怒しても何も変わらない…
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/71876?page=5

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■なぜ、「WHOは中国が牛耳っている」のか?

WHOの例で見たように、国際機関は先進国が中心となって活動資金を支えている、この考え方からすると、
WHOは今も、アメリカを中心とした先進国が主導していることになるのだが、どうして「WHOは中国が牛耳っている」と言われる状態になったのか。

鍵を握るのは発展途上国の存在だ。前述したようにWHO事務局長は、国連加盟国の投票で選ばれる。そして投票権は、拠出額ではなく、1国が平等に1票を投じて行われる。

エチオピア出身のテドロス事務局長が当選した選挙でも、イギリスとパキスタンからも候補者が出ていた。
こういう状況では、国数の多い発展途上国票を固めたほうが、最終的に当選する。

なぜ中国は、これほどまで発展途上国から支持を集めているのか。それは、アメリカに替わって中国が国際公共財を提供してくれるケースが増えたからだ。
今回の新型コロナウイルスでも、マスクや人工呼吸器は、アメリカが禁輸したため、ほとんどが中国からやってくる。

アメリカ政府ですら4月3日に、中国企業4社が中国基準で生産した「KN95マスク」を医療現場で使用することを許可したぐらいだ。
日本でも、ソフトバンクの孫正義氏が、月産3億枚のマスクを確保したことが話題となったが、供給元は中国のBYDで、アメリカが許可した中国企業4社のうちの1社だ。
つまり日本でも中国マスクが入ってくることで歓喜している。

中国が途上国から支持されるもう一つの理由は、密接な経済関係にある。中国は今、途上国への輸出総額で世界1位、輸入総額で世界2位の地位にある。
特に重要なのが輸入総額(下図の右)で、中国がアメリカに迫ろうとしている。

いま開発学と呼ばれる分野では、「グローバル・バリューチェーン(GVC)」という概念が注目を集めている。
途上国が発展するためには、海外企業に材料や部品を供給することで、技術を磨き、経済的にも力をつけることができるという理論だ。


■日本のコロナ対策は海外から不評…?

中国企業のサプライチェーンに入ることができれば、途上国企業も成長し、社会全体もテイクオフ(離陸)できるのではないかと期待が集まっている。

それに対し、アメリカはトランプ政権以降、「アメリカ・ファースト」の掛け声で、保護貿易主義的になり、対外支援も惜しむようになってきた。
すなわち国際公共財を提供する役割を放棄しつつある。

中国が国際公共財の担い手になり、発展途上国から支持を集める中、日本はどうすべきか。

日本政府は過去数年間、中国による対外支援は、支援先の国を借金漬けにして、最終的にはインフラ権益を奪ってしまう悪徳商法だと主張し、
G20の会議でも、中国の対外支援を国際的に監視するよう呼びかけてきた。

だが一方で、新型コロナウイルスの経済対策の中で、工場を海外から日本に移転し、国内生産を増やす策を打ち出した。
そのことで、途上国からはすでに「日本企業が去っていく」と悪い印象につながってしまっている。

加えて、「日本国内が大変なときに、海外援助に国家予算を割いている場合ではない」という意見も出るようになった。
こうした姿は途上国からは、日本も国際公共財を提供してくれなくなったと映る。

アメリカが覇権国の地位から遠ざかり、中国がそれに変わろうとしている今、本当に日本は対外支援を減らしていて大丈夫なのだろうか。

とりわけ、中国の勢いを止めるためにWHOへの資金拠出をやめるべきだと思っている人は、むしろ資金拠出を止めてしまえば、
中国はさらに途上国からの支持を集め、中国の勢いを加速させることを理解しておいたほうがよいだろう。