<新型コロナ>入管が収容者仮放免方針 3密でのクラスター回避へ

東京新聞 2020年4月17日 21時18分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202004/CK2020041702100187.html

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多くの外国人が収容されている東京出入国在留管理局=東京都港区

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東京出入国在留管理局の前で仮放免を求めてデモをする人々=2月29日、織田朝日さん提供

 新型コロナウイルスの感染拡大が進む中、出入国在留管理庁(入管)が、
収容中の外国人の仮放免を積極的に認め始めた。
施設内で感染者が出ればクラスター(感染者集団)発生も懸念され、
「強制送還の見通しが立たない中で、柔軟に対応していく必要がある」と判断。
収容されている人々を支援する弁護士は
「早期に多くの収容者を仮放免してほしい」と訴えている。(望月衣塑子)

 収容者の支援者らによると、施設は一人部屋だけでなく、
四畳、六畳、六人ほどが入る十二畳部屋がある。
洗濯機やシャワーは共同で使うなど
「密閉・密集・密接(三密)」な状況に置かれているという。

 入管側は希望者にマスクを配布しているが、
なかにはマスクをつけていない人もいる。
消毒液も希望者にその場で吹き掛けるなどしており、
室内に常備されているわけではない。

 入管警備課は
「引受人がいる人などは、できるだけ仮放免して対応していきたい。
 施設内も一部屋あたりの収容者数を減らすなど、密な状態をできるだけなくし、
 衛生面や医療の面でも収容者の状況を改善できるよう配慮していきたい」
と話している。

 支援者によると、収容されている人は発熱すると隔離部屋に移される。
しかし熱が下がって相部屋に戻ると、
同室者が「コロナではないのか」と騒ぎになるケースもあるという。
発熱だけでなく「味覚、嗅覚がなくなった」と訴えていた別の男性の姿を
見かけなくなったという情報もあるという。
駒井知会弁護士は「皆、感染の恐怖におびえている」と指摘する。

 入管によると、全国の施設の収容人数は計千二百九人(四月十五日現在)。
発熱したり、体調を崩した人はいるものの、
保健所の判断でPCR検査にまで至った外国人はいない。
このため新型コロナウイルスの陽性判定を受けた人もいない。

 安倍政権は二〇一八年、東京五輪に向けて不法就労外国人への取り締まり強化を表明。
以降、二年を超える長期収容が増加した。
これに抗議する人々がハンガーストライキを実施し、
昨年六月にはナイジェリア人男性が餓死した。

 駒井弁護士は
「長期収容が続く中で、ハンストを繰り返して体重が極端に減ったり、
 自殺未遂を重ねたりするなどして、心身のバランスを崩す人が少なくない。
 深刻な疾病を抱える人々も多い。
 感染者が出れば、体力のない彼らの間でクラスター化が進むことを心配している。
 入管職員らの命を守るためにも、受け入れ先がある人は、早期に解放してほしい」
と訴える。

 英国では、入管施設に千七百二十七人(昨年六月末)が収容されていたが、
施設内で複数の感染患者が出たことを受け、
三月に三百五十人を施設から解放する措置に踏み切った。

 入管問題に詳しい指宿昭一弁護士は
「収容の前提である、強制送還ができない状況下で
 彼らを拘束する正当な理由は全くない。
 仮放免を出し、やむを得ない事情で収容を続けるしかない人々には、
 感染リスクを減らす対策を講じ、適切な医療体制を整えてほしい」と話している。