https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200420-00010000-nknatiogeo-sctch
■鳥がいると、人間がサイを見つける確率は40〜50%減少
アフリカに「ウシツツキ」という名の小さな鳥がいる。動物に寄生するダニなどを食べる鳥だ。
その一種、アカハシウシツツキは、サイなど20種以上の動物の虫を食べるが、それだけではない。
この鳥は、サイが人間に見つからないように「見張り番」の役割も担っているかもしれないとする研究成果が、4月9日付けで学術誌『Current Biology』誌に発表された。

クロサイは優れた嗅覚と聴覚をもつが、視覚はそれほどでもない。
このため、クロサイの風下からだとかなり接近できると、今回の論文の著者でオーストラリア、ビクトリア大学の研究者であるローン・プロッツ氏は語る。
プロッツ氏は、南アフリカ西部にあるシュシュウェ・イムフォロジ公園のクロサイを調査する中で、サイがどうやって人間を避けるのかについて検討し始めた。
成長すると1.5トンもの重さになるクロサイだが、近年は密猟により個体数が激減。
現在は近絶滅種(Critically endangered)に指定されており、生息数は5000頭余りと1970年代と比べて10分の1になっている。

調査するうちプロッツ氏は、直接観察できるほど接近できる個体には、アカハシウシツツキが乗っていないことが多いと気づいた。
アカハシウシツツキは視力が優れ、人間を含め脅威となり得る動物が近づくと「シューッ」という警戒音を発する。
もしかして、とプロッツ氏は思った。
アカハシウシツツキが、人間の接近をクロサイに知らせているのだろうか。
なにしろこのウシツツキのスワヒリ語名「Askari wa kifaru」は「サイのガードマン」を意味するくらいだ。

実験の結果は、この仮説を支持していた。
アカハシウシツツキと共にいるクロサイのほうが、そうでないクロサイよりも人間を発見することが多く、しかもより遠くから発見できていたのだ。

■鳥がいれば、人に気付く
プロッツ氏らの研究チームは、実験にあたり、アフリカで最も古い自然保護区の1つであるシュシュウェ・イムフォロジ公園に生息する14頭のクロサイに、
無線追跡装置を取り付けた。そうしてアカハシウシツツキが乗っているクロサイと乗っていないクロサイに、合わせて86回、接近した。
その結果、アカハシウシツツキが乗っているクロサイに接近した場合、クロサイは例外なく人間に気付いたことを示す行動をとった。
まっすぐ立ち、風下に顔を向け、逃げる準備をするのだ。
一方、アカハシウシツツキが乗っていないクロサイへの接近の場合、こうした行動が見られたのは全体の23%のみだった。

人間を発見するには、アカハシウシツツキの数は多ければ多いほど有利なようだった。
1羽増えるごとに、平均して9メートル手前で人間に気付くことができた。
統計的分析の結果、アカハシウシツツキは、人間がクロサイを見つける可能性を40%から50%減少させていると、プロッツ氏らは結論付けた。

これらの研究結果は、アカハシウシツツキとクロサイの関係がこれまで考えられてきたよりも複雑であること、
そして双方にとって有益なものである可能性を示しているとプロッツ氏は言う。
さらに、アカハシウシツツキが減少してしまった地域に彼らを再導入することで、クロサイの密猟が減り、保全に役立つ可能性も示唆している。

「クロサイがアカハシウシツツキの警戒音を『盗聴』でき、それによって、接近してくる人間の存在により遠くから気づくことができると言えます」
と、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校の生態学者、ダニエル・ブルームスティーン氏は話す。
同氏は今回の論文には関わっていないが、Eメールでの取材に答えてくれた。
ブルームスティーン氏はまた、アカハシウシツツキが1羽増えるごとに、クロサイが離れた場所にいる人間に気付くことができる距離が長くなる点にも興味をひかれたと言う。

今回の論文について、「純粋にすばらしい研究です」と、オーストラリアのグリフィス大学の研究者、ダリル・ジョーンズ氏は言う。
しかし、「地元の人々にとっては、この関係性は何千年も前から『わかっていた』ことで、おそらく彼らはそこまで感心することはないでしょう」と話す。
実際のところ、それはこの研究の大きな成果の1つだ。
重要な伝統的知識を、現代の方法を用いて裏付けたのである。

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