この度、筆者が所属する公益財団法人社会経済研究所では、新型コロナウイルス感染症が、(1)世界経済の減速、(2)インバウンドの減少、(3)家計消費の縮小、(4)東京五輪の延期という4つの需要ショックを介して日本のマクロ経済に与える影響を試算したレポート「新型コロナウイルス感染症が 2020 年度の全国・中部圏 に与える経済的な影響について」を公表しましたので、その中から特にシナリオ2に基づく内容を紹介させていただければと思います。

なお、本記事のなかの意見にかかる部分は、全て筆者個人の見解であり、筆者が所属するいかなる組織の見解とも一切関係はありません。また、引用などの際には、必ず元のレポートを参照し、直接引用してください。

試算前提「4つの需要ショック」
この手の試算は、残念と言うべきか、当然と言うべきか、前提次第でいかような結果も導き出せます。したがいまして、試算結果の妥当性を評価するには前提を明確にし、前提の妥当性について読者の判断を仰いでおく必要があります。

前提1 世界経済の減速

新型コロナウイルス感染症による2020年の世界GDPの動きについては、IMF の2020年4月「世界経済見通し」から「より厳しい代替シナリオ」の想定を借用して、▲6.0%まで減速することにしました。

前提2 インバウンドの減少

新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延により訪日外国人旅行者数の落ち込みは不可避ですので、ここでは、2020 年4月から9月まで、訪日外客数(総数)が平均で前年同月比▲93.0%(3月の訪日外客数(総数)減少率と同じ)減少するものと想定しました。

前提3 家計消費の縮小

外出の自粛や緊急事態宣言に伴う休業要請による家計消費の縮小のピーク(3割以上の消費縮小が発生)の期間については、緊急事態措置が予定の5月6日より延長され、6月いっぱいまで続くものとします。その後は、家計の支出が東日本大震災の発生後と同様のパター ンで回復、挽回されると仮定しました。その結果、消費支出(全国)は、年間で、▲9.4%トレンドから下押しされることになります。

前提4 東京オリンピック・パラリンピックの延期

東京オリンピック・パラリンピック大会「後」に東京都を含む全国で発生する関連需要のうち、一年分に相当する 6,950 億円(うち東京都 5,402 億円)を「延期によって消滅する需要」としました。

試算結果「新型コロナウイルス感染症は2020年度の日本のGDPを85兆円押し下げる」
以上の前提により、新型コロナウイルス感染症の経済的な影響について試算した結果、日本の実質国内総生産は水準では▲85.0兆円程度押し下げられ、経済成長率では▲15.8%のマイナス成長となります。

ちなみに、政府は現在までの経済政策の効果を対実質GDP比で4.4%押し上げると試算していますので、それを考慮したとしてもなお▲11.4%のマイナス成長の可能性を指摘できます。

つまり、第二、第三の経済対策が必要とされる可能性が大きいと言えます。

経済の落ち込みはリーマンショック以上
なお、リーマンショック発生時の実質国内総生産で見た経済成長率は、2008年度▲3.4%、2009年度▲2.2%(暦年での前年比は2008年▲1.1%、2009年▲5.4%)ですから、今回の新型コロナショックは、経済対策の効果を織り込んだとしてもなおリーマンショック以上と評価できます。

4/25(土) 10:30
https://news.yahoo.co.jp/byline/shimasawamanabu/20200425-00175162/
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