<残存ウイルスと再活性化>

専門家・医師たちは、再陽性患者においてウイルスがこのように変わった振る舞いを示す理由をどう説明すればいいのか、頭を悩ませている。

以前の検査で陰性となったのに再検査で陽性となる患者は、何らかの形で再感染したのではないかと示唆する見方もある。こうなると、いったんCOVID−19にかかれば抗体が生成され、新型コロナウイルスによる再罹患を防げるという希望が薄れてくる。

中南病院の救急医療医ツァオ・ヤン氏は、確固たるエビデンスはないものの、自分の勤務施設における症例をもとに考えれば、再感染の可能性に対しては懐疑的になると話している。

「彼らは病院ではしっかりと監視されているし、リスクについても意識が高い。だから隔離状態を続けている。再感染はないだろうと思う」

韓国疾病予防管理センター(KCDC)のディレクターを務めるジョン・ユンキョン氏は、すでにウイルスが体内から消えたと思われた後に再陽性と判定された韓国人患者91人について、ウイルスが「再活性化」した可能性がある、と述べている。

韓国・中国の別の専門家らは、ウイルスの残滓(ざんし)は患者の身体に残るものの、宿主や他の人間に対する危険性・感染性は持っていない可能性がある、と述べている。

こうした再陽性患者について、基礎疾患の有無などの詳細はほとんど開示されていない。

英イーストアングリア大学ノリッジ・スクール・オブ・メディシンのポール・ハンター教授は、ノロウイルスやインフルエンザなど他のウイルスの場合、免疫機能が低下している患者において消滅が異常に遅くなる事例が過去に見られた、と指摘する。

韓国当局は2015年、リンパ腫の基礎疾患がある中東呼吸器症候群(MERS)患者で、ウイルスが116日間体内に残っていた例を発表した。免疫機能の低下により、身体がウイルスを排出できていなかったという。この患者は最終的に、リンパ腫により死亡した。

中南病院のユアン副院長は、患者の体内で抗体ができても、ウイルスが消滅したことを保証するわけではない、と言う。

同氏によれば、一部の患者では、抗体レベルが高くても核酸増幅検査で陽性と判定されているという。

「つまり、抗体とウイルスがまだ戦いを続けているということだ」とユアン副院長は言う。

<精神的苦痛、自殺願望も>

武漢の例に見られるように、まるで際限なく繰り返されるかのように陽性判定が続く人にとって、新型コロナウイルスは精神的にも重荷となってのしかかっている。

心理カウンセラーのデュさんは、武漢での感染拡大が始まったとき、心理療法のホットラインを開設した。彼女は4月初め、郊外の隔離センターを訪問する際に、ロイターの記者の同行を認めてくれた。患者の身元をいっさい明かさないことが条件だ。

ある男性は、この隔離センターの1室に移送される前に入院した3カ所の病院名をスラスラと挙げた。彼は2月第3週以来、10回以上の検査を受けており、時には陰性もあったが、たいていは陽性の判定だったという。

「体調はいいし、何の症状もない。だが検査をいくら繰り返しても陽性になる」と男性は言う。「いったいこのウイルスはどうなっているのか」

患者はこの隔離センターに少なくとも24日間留まらなければならず、陰性判定を2回もらわなければ解放されない。患者はそれぞれ個室に隔離されており、彼らの話では、費用は政府持ちだという。

隔離センターを訪問するデュさんが直面した最も憂慮すべきケースが、冒頭のマホガニー製のドアの向こうにいた男性である。彼はその前夜、医療スタッフに自殺願望を語ったという。

この男性は「頭が混乱していた」とデュさんに語り、いくつもの病院で数限りないCTスキャンや核酸増幅検査を受けてきたこと、そのなかには陰性判定もあったことを説明した。

これほど長く離ればなれになってしまったせいで孫が寂しがっている、と男性は語った。自分の状況からすると、もう二度と孫には会えないのではないかと懸念しているという。

そこまで話すと、男性は再び涙に暮れた。「どうして私がこんな目に」

(翻訳:エァクレーレン)
https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-china-patients-idJPKCN22602O