妊婦への影響と職場で必要な配慮
 新型コロナウイルスの感染拡大で、働く妊婦への職場の対応が問われている。妊娠中の肺炎には重症化の可能性も指摘され、政府は経済団体に配慮を要請したが、「特別扱いできない」とこれまで通りの勤務を求める職場も多い。専門家は「各職場の働き方改革に取り組む姿勢が浮き彫りになっている」と指摘する。

 「あなたの後任の同僚がコロナにかかってもいいということ?」。銀行で働く妊娠中の30代女性は、感染リスクを下げるため顧客対応の少ない担当への配置転換か休職ができないか上司に相談したところ、こう返答されて言葉を失った。女性は「同僚が感染してもいいなんて考えているわけがない。ただ、もし赤ちゃんに悪影響があったら……」と不安を吐露する。しかし、「長くここで働きたいので、人間関係を考えると無理は言えない」と途方に暮れる。’(中略)


相談前に在宅勤務勧める企業も
 一方で、妊娠中の女性に配慮する企業もある。東京都内の大手電機メーカーで働く妊娠中の女性(35)は3月上旬、上司から在宅勤務を勧められ、自宅でできる資料作成を割り振ってもらった。(中略)

 厚生労働省は4月1日、経済団体などに対して、妊娠中の女性労働者の感染リスクを減らすため、休みの取得や在宅勤務を進めるよう配慮を要請した。(中略)

 妊婦への配慮が進まない背景には、長時間労働が評価される慣習が根強く、働き方改革が遅れている現状がある。ニッセイ基礎研究所が3月に20〜50代の就業者約4500人を対象に実施した調査によると、「女性が活躍できる組織づくりが進んでいる」との回答は3割程度。「長時間働ける人が評価されやすい」も3割超あった。

 同研究所の久我尚子主任研究員は「働き方改革を進めてきた職場は、妊婦に限らず個人の事情に配慮ができる。改革の取り組みが不十分な職場は妊婦への対応でも遅れが浮き彫りになっている」と指摘。「出産を機に退職する女性は依然多く、環境整備ができない職場は優秀な人材を手放すことになる」と強調している。【古屋敷尚子】

毎日新聞2020年4月26日 13時00分(最終更新 4月26日 13時00分)
https://mainichi.jp/articles/20200426/k00/00m/020/007000c