https://nazology.net/wp-content/uploads/2020/04/e61_1.png凹凸のある平行なアルミ板だけで、特定の音波を一方通行にするという導波管が発表されました。

一方通行という文字を見ると、反射的にアクセラレーターと読んでしまう人が世の中にはいるそうですが、こうした信号を一方通行させる素子のことはダイオードと呼びます。

大抵ダイオードは電気を一方向だけに流す素子ですが、音響を一方向に流す素子は超音波画像を鮮明にさせるなどの可能性を持っています。

これまでの音響ダイオードは、特殊な材料を用いたものや、複雑な電源を必要とするシステムで構築されたものがほとんどで、伝送効率は30%未満でした。

しかし、新しい研究で発表された音響ダイオードは、導波管の構造だけで音の一方通行を実現していて、電源も必要なく、伝送効率は93%だといいます。

ダイオードってなんだっけ?

ダイオードは電気を一方向にだけ流す電気素子が一般的です。

家庭用電源は交流電流なので、それを直流に整えたり(整流)、電池を逆さまに入れてしまった場合の逆流を防いだりします。

いわゆる人体の血管内にある血液の逆流を防ぐ弁と同じ作用をするものです。

一般的なダイオードは+(プラス)の性質を持つ半導体と-(マイナス)の性質を持つ半導体が接合されていて、逆方向に電気が流れると、プラスとマイナスが離れてしまい、電気が流れなくなってしまいます。

正しい方向に電気を流すと、半導体の接合部でプラスとマイナスがくっついて打ち消し合い、電気が流れるようになります。

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この電気が打ち消し合うときに光エネルギーに変換される性質を利用して、照明器具に転用したものがLED(発光ダイオード)です。

現在はあらゆる場所にLEDが普及していて、信号のライトからテレビのバックライトや家庭内の照明までLEDなので、ダイオードと聞くと照明器具かな? と思ってしまう人もいるかもしれません。

しかし、ダイオードとは基本的に一方通行の伝送システムのことを指しているのです。

音の一方通行

音を一方向にしか通さない音響ダイオードは、私たちにはあまり馴染みのない技術ですが、音響ノイズを取り除いたり、超音波画像などを鮮明にしたりする技術として、研究されています。

これまで一般的だった技術は、フォトニック結晶など特殊な材料をしようすることで、一方向に強制的に信号を伝送するものでした。

天然のフォトニック結晶の代表例はオパールで、光の波長レベルで内部の誘電率が変化していて特殊な色合いを生み出している。/Credit:Wikipedia Commons

これは伝送効率が非常に悪く、伝送される波の強度を大きく下げてしまったり、周波数が元から変化してしまうという問題を抱えていました。

もっと複雑なシステムを使い、機械的な処理で音を一方通行にするものもありますが、電源が必要で取り扱いも難しくなります。

ところが、今回の研究では、単純に平行なアルミ板の凹凸構造だけで音の流れを制御しています。

この画像がその素子のモデルで、これは左から右へは音を通しますが、右から左へは音が伝わりません。

見ると最初は両側から対称に突き出たアルミ板が、その奥では互い違いになり、最後は中央を塞ぐように板が通っています。

この構造によって、この導波管では特定の周波数の音の共振を制御していて、実験では順方向へは2280Hzの音響を93%で伝送させることが可能だが、逆方向への伝送率はほぼゼロになったといいます。

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映画やゲームには、拳銃の発砲音を消すサプレッサーという道具が出てきますが、あれも内部構造で消音をしています。

今回の研究は似たようなことをやっているものですが、音を単純に消すだけではなく、一方向については綺麗に通してくれるというところが画期的なところです。

だた、現状この方法では特殊な波形の音でしか利用できず、また利用可能な周波数も非常に狭い範囲に限定されているそうです。

実用段階にはまだ遠いようですが、単純な材料を積み木のように設計することで、音響ダイオードを実現させたという意味で、非常に興味深い研究だと言われています。

https://nazology.net/archives/57369