中国・武漢市を発生源とする新型コロナウイルスによる肺炎が世界規模で猖獗(しょうけつ)を極めている現在、東アジアの島嶼国である日本と西欧、それに「新大陸」のアメリカがその撲滅に苦労している。対照的なのはユーラシア大陸だ。実際の様子を見てみよう。

まずは陸地で数千キロにわたって中国と国境を接するモンゴル国。中国南部で新型コロナウイルスが流行したとのニュースが伝わると、1月27日に国境地帯を全て封鎖した。航空便だけでなく、列車と自動車など中国との交通を全面的に遮断し、人的交流を止める強硬措置を取った。

ただ、そのままでは独裁的な隣国の気難しい指導者の機嫌を損なう恐れがある、とみたモンゴル国は最高指導者が北京を訪問した。これまでも例えば、中国が敵視するチベット亡命政権の指導者ダライ・ラマ14世の宗教的な訪問をモンゴルが受け入れただけで、中国は国際列車を止め、交流を制限するなどの嫌がらせを繰り返してきたからだ。

以前のような「復讐」を避けようとして、モンゴルの大統領バトトルガは2月27日、専用機で首都・北京の空港に降り立った。世界の指導者たちが誰も習近平(シー・チンピン)国家主席に近づこうとしなかった「困難な時期」に来訪した草原の国の指導者を北京は「外交の成功」として位置付けた。バトトルガは「中国人民への見舞いとして、ヒツジ3万頭を贈る」と述べてウランバートルに戻った。日帰りの北京訪問だったが、自国民を安心させるため、大統領とその随員たちは帰国後2週間、病院で隔離に入り、外部との接触を絶った。

「匈奴人や蒙古人はいつも家畜を追って来て、わが中華の文明的物質を欲した」と、中国のSNSに書き込む者もいたが、瞬時に削除された。「敵はウイルスを持ち込んだアメリカだ」と宣伝している時期にあって、中国も北の隣人をけなすわけにはいかない。

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