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2020/05/01(金) 21:35:11.33ID:aSo43UlV9この動物は「Adalatherium hui(以下、A.hui)」と命名され、これは「狂ったケモノ(crazy beast)」を意味します。その名に負けず、奇妙な生態・進化を辿っているようです。
イメージ図
https://nazology.net/wp-content/uploads/2020/04/010-adalatherium-hui-2.jpg
生息年代は中生代末期の「マーストリヒチアン時代(約7210万年?6600万年前)」。
研究を行ったオーストラリア・モナーシュ大学は、「南半球で発見された最古の哺乳動物である」と話しています。
「幻の哺乳類」の秘密をあばく鍵となる
研究の結果、A.huiは「ゴンドワナテリア」と呼ばれる幻の哺乳類に属することが分かりました。
ゴンドワナテリアは、同時期の南半球にいた哺乳動物群のこと。すでに絶滅しており、化石記録も少ないため(歯と顎の一部のみ見つかっている)、詳細はほとんど知られていませんでした。
そこへ来て、A.hui(しかも全骨格)が見つかったことは奇跡に近いでしょう。
これで、幻の哺乳群であるゴンドワナテリアの解明が一気に進展することが期待されています。
独自の進化ルートをたどっていた
さらに、A.huiは、大陸にいた哺乳動物とはまったく異なる、独自の進化ルートをたどっています。
A.huiが生息したマダガスカルは、もともとゴンドワナ大陸という超大陸に属していました。
ゴンドワナ大陸は、約1億8000万年前に分裂を開始し、7000万年前に、インド・南米・オーストラリア・アフリカ・マダガスカル・南極へと分かれたのです。
この大きな動きの中、マダガスカルは、約8800万年前にインド亜大陸から分裂し、今日見られる孤島として独立しました。
そして、A.huiがマダガスカルに誕生したのはそれからさらに2000万年ほど後です。
つまりA.huiは、始まりから隔離された世界の中に生まれ、大陸の哺乳類とは異なる進化線に入ったのです。
現生の哺乳類には見られない特徴の数々
3Dで復元した骨格
https://nazology.net/wp-content/uploads/2020/04/file-20200429-110775-1nezuc4.jpg
化石分析により、A.huiには、現生および絶滅した哺乳類の骨格と異なる点がいくつも見つかっています。
例えば、鼻の領域に「septomaxilla」という骨が見られるのですが、これは、現生哺乳類の祖先において、約1億年前に消えたものです。
それから、頭蓋骨には、他のどの哺乳類よりも多くの開口部が見られました。これらは、頭蓋骨により多くの神経や血管を通すことで、嗅覚やヒゲの感度を高める目的があったとされます。
こちらは、A.huiを360度から見た20秒ほどの映像です。
https://youtu.be/cY8jVAsjdrM
これを見ると、後ろ足がかなり湾曲して弓なりになっていることが分かります。
理由は不明ですが、「地面を掘るのに便利だった」「走るスピードを速めるのに有利だった」など、色々な推測がなされています。
発見された個体は、まだ発達段階にありましたが、同時期の哺乳類に比べると大きく、ネコほどのサイズで推定体重は3.1キロでした。
また、歯の分析から、草食であったことも判明しています。
マダガスカルのような孤島は、大陸とは異なり、孤島独自の進化ルールを持ちます。
例えば、もともと大きかった生物は、エサが少ないせいかサイズダウンし、反対に、小さい生物は、天敵が少ないせいかサイズアップするのです。
A.huiもこうした環境の中で、普通の哺乳類とは違う進化をしたのでしょう。
研究は、4月29日付けで「Nature」に掲載されています。
https://nazology.net/archives/58563