新型コロナウィルス感染拡大防止のために、日本だけでなく世界中の多くの国で外出自粛や外出の制限、禁止が続いている。外出の禁止や制限で自由を奪われている現在の状況を第2次大戦時のナチスドイツに迫害、差別されていたユダヤ人の状況、いわゆるホロコーストに例えられることが多い。第2次大戦時にナチスドイツによって、約600万人のユダヤ人が殺害された。殺害に至るまでに、日常生活においてもユダヤ人は黄色い星を着用させられたり、学校や職場から追放されたり、公園や映画館の使用を禁止されたり、ゲットーに閉じ込められて生活させられたり、夜の外出は禁止させられたりと差別・迫害されていた。そしてユダヤ人は「移住」という名目で強制労働のために収容所に移送され、強制労働に適さない老人や子供はガス室で殺害されていった。

 特にオランダのアムステルダムでアンネ・フランクが1942年から約2年間にわたって、ナチスドイツからの迫害から逃れるために、隠れ家に潜んで生活して、一切外出ができなかったこと、いつ殺害されるかわからない恐怖が、現在の新型コロナウィルス感染拡大防止のための不自由な生活と比較されることが多い。ホロコースト時代の象徴的な存在である「アンネの日記」は世界中で長年にわたって読まれてきたため、多くの人がその窮屈で死と隣合わせの恐怖の生活を想像できる。

 このような状況の中で、アメリカのニュージャージー州にあるラリタン・バレー・コミュニティカレッジでは2020年4月17日から「苦難の時代における回復する力:希望につながる証言(Resilience During Challenging Times: Testimonies That Provide Hope)」というタイトルのクラスを開講。ホロコーストの生存者7人が毎週、順番で講義を行い、ホロコースト時代の経験を踏まえて、現代の新型コロナウィルスでの状況や当時との比較を語っていく。WEB会議ZOOMを用いて世界中の人がアクセスして受講できる。ホロコースト生存者も自宅から配信し、当時の様子を伝えている。

 ニュージャージー州でホロコースト教育に携わってきたホロコースト生存者のマルギット・フェルドマン氏は2020年4月14日に新型コロナウィルスに感染して90歳で死亡した。フェルドマン氏は15歳の時にポーランドにあるアウシュビッツ絶滅収容所からドイツのベルゲン・ベルゼン収容所に死の行進で歩いて行かされた経験もあった。戦後アメリカにわたり、公立学校でのホロコースト教育の必須化などに尽力していた。ニュージャージー州の州知事のフィル・マーフィー氏は彼女の死に際して「ホロコーストの歴史は世界の人が忘れてはいけないことです」とコメントを寄せていた。

「ユダヤ人だから殺害されたホロコースト、誰もが平等に感染する新型コロナ」
 講義に登場したホロコースト生存者で84歳のマウド・ダーム氏は、第2次大戦時にナチスドイツに侵略されたオランダに住んでおり、6歳の時にオランダのキリスト教徒の農家の家にかくまってもらいながら、姉妹で隠れ家を転々としながら、3年間にわたって身を潜めて生き延びてきた。子どもだったため、キリスト教徒の農家にかくってもらえたが家族や親せきのほとんどがナチスドイツに殺害された。戦後、アメリカにわたってきた。ダーム氏は自身のホロコーストの経験も踏まえて、現在の新型コロナウィルスでの状況について「最も重要で貴重なことは、生きていることです。現在、私は温かい家があって静かに暮らしていることを実感しています。現在の新型コロナウィルスで自宅に身を潜めていても、第2次大戦時のように、誰も突然にドアをノックしてきて私たちを連れだしたり、していきません。もちろん、外出禁止で不自由なこともたくさんありますが、私たちが自宅にいるだけで自由であり平和になれるのです。新型コロナウィルスの拡散は非常に恐ろしいことですが、これで世界が終わることはないと信じています。私はホロコーストの時代に最悪の世界を見てきました。当時に比べると今の時代は美しく見えます」と語っていた。

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5/2(土) 23:30
https://news.yahoo.co.jp/byline/satohitoshi/20200502-00176590/
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