https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200506-52554885-bbc-int
 ドナルド・トランプ米大統領は5日、新型コロナウイルス対策に当たる政府の対策本部(タスクフォース)を解散する方針を明確にした。
対策本部を率いるマイク・ペンス副大統領は、数週間以内に解散されるとの見通しを示した。

何週間かにわたってホワイトハウスにこもっていたトランプ氏はこの日、アリゾナ州フィーニックスのマスク製造工場を視察。
ゴーグルは着けたがマスクはしないまま、記者団に、「国を元に戻していく」と述べた。
また、「マイク・ペンスとタスクフォースは素晴らしい仕事をしてきた。だが我々は少し違った形を考えている。安全と再開だ。そのための別のグループを設置することになる」と話した。

タスクフォースは任務を完了したのかと問われると、「いや全然。任務完了となるのは(感染の流行が)終わったときだ」と答えた。
さらに、「すべて完璧だと言っているわけではない。影響を受ける人はいるか?  いる」、
「ひどく影響を受ける人はいるか?  いる。でもこの国を再開させなくてはならないし、すぐに再開させないとならない」と主張した。

アメリカでは現在、新型ウイルスの新たな感染者が1日あたり2万人以上確認されている。
1日あたりの死者は1000人を超えている。
保健当局は、経済活動の再開に伴い、新型ウイルスの感染が拡大する恐れがあると警告している。

ジョンズ・ホプキンス大学の集計(日本時間6日午前10時現在)では、アメリカで確認された新型ウイルスの感染者は120万人を超え、死者は約7万1000人となっている。
トランプ氏の新型ウイルス対策については、国民の健康を犠牲にして、11月の大統領選をにらんで国内経済の再開を急いでいるとの批判が出ている。
トランプ氏はこの日、新型ウイルス対策の政府調整官のデボラ・バークス医師や、米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)所長のアンソニー・ファウチ博士などの専門家が
引き続き、政府の対策に関わると述べた。

■5月下旬か6月上旬の再開を検討
一方、ペンス副大統領は5日、記者団に対して、タスクフォースが近く解散される可能性を示唆した。
タスクフォースは大統領直属のグループで、医療機関と政治家、州知事らの調整などに当たっている。
医療専門家らと協議し、社会的距離に関する勧告を出した。

ペンス氏は、トランプ政権がメモリアル・デー(戦没者追悼記念日、今年は5月25日)の前後や6月上旬を、国内活動の再開に取りかかる時期として検討し始めていると説明。
「我々が国として成し遂げた、驚異的な前進を反映したもの」だと述べた。

■じわじわ拡大
アメリカはまだ、新型ウイルスの大流行を抑え込んではいない。
感染者が飛び抜けて多いニューヨーク州以外でも、じわじわと感染が拡大している。
テキサス、アイオワ、ミネソタ、テネシー、カンザス、ネブラスカ、インディアナなど、経済活動を再開させた多くの州で、日々報告される感染者数に増加傾向が見られる。
ニューヨーク、ニューオーリンズ、デトロイトなどの都市で状況が改善している一方、ロサンゼルス、首都ワシントン、シカゴでは感染者の確認件数が増えている。

連邦緊急事態管理局(FEMA)の報告書は、来月までに毎日3000人以上が新型ウイルスで亡くなる恐れがあると予測している。
ただ、政府はこの報告書を不正確だと一蹴。トランプ氏は、米国民が感染拡大対策をまったく取らなかった場合のシナリオだと述べた。

■別のガイドラインを準備か
トランプ氏は3日、アメリカの新型ウイルスによる死者数の見通しを、2週間前の6万人未満から10万人に引き上げた。
政府がしばしばデータを引用するワシントン大学の研究所は、死者数は8月4日までに13万5000人に上ると予測。
これは、先月17日時点での予測の2倍以上に当たる。

BBCのアンソニー・ザーカー北米担当記者は、いくつかの州がトランプ氏の勧めで、政府のガイドラインの基準を満たしていないにもかかわらず、制限の緩和を始めていると説明。
そのガイドラインは現在のタスクフォースによってつくられたものであり、トランプ氏がこの日、設置すると述べた「違った形」の「別のグループ」は、異なる考えをもつかもしれないと指摘した。