2年間にわたり世界経済の足かせとなり、今年1月にようやく関係が修復された米中貿易戦争の暗雲が再び立ち込めることが懸念されている。
米国が中国を中心として形成されている現在のグローバルサプライチェーン自体を再編する計画に乗り出したからだ。
第1次貿易戦争で米国は中国製品に課す関税を武器としたが、新型コロナウイルスで触発された第2次貿易戦争では中国の「世界の工場」としての地位に照準を定めるとされる。
コロナでただでさえ低迷した世界経済が再び激しい嵐に巻き込まれる可能性も否定できない。

トランプ政権の「脱中国構想」は単純な経済報復を超え、米国の未来戦略と結び付いている。ホワイトハウスの対中強硬派である
ピーター・ナバロ米大統領補佐官(通商製造政策局長)は中国中心のサプライチェーンからの脱却計画について、CNNのインタビューに応じ、
「我々が(新型コロナウイルスによる)こうした危機でも(中国のサプライチェーンからの脱却に)失敗すれば、我々はこの国と未来の世代にまで失敗させることになる」と述べた。
ロイター通信は4日、米国の対中強硬派がコロナ事態によって、チャンスを迎えていると評した。
トランプ政権高官は「以前中国との取引で稼いだと思っていたカネの数倍が(コロナによる)経済被害で消えた」と述べた。

トランプ大統領としては、11月の大統領選を控え、中国に対する強硬策を展開しても損にはならない。トランプ大統領はFOXニュースのインタビューに対し、
「中国が(合意済みの)2000億ドル相当の米国の製品・サービスを購入するという約束を履行しなければ、(貿易)交渉を破棄する」と警告し、貿易戦争の再開可能性を公言した。
米国での新型コロナウイルスによる確定患者が118万人を超え、死者が7万人に迫る中、中国責任論で国内の危機を脱出し、
自国の製造業を保護するという名分で大統領選最大の決戦地であるラストベルト(米北東部の衰退した工業地帯)の有権者の支持を得られるからだ。

ロイター通信はトランプ政権の水面下で進む脱中国計画が「急速充電(ターボチャージング)」されていると表現した。
これまで世界経済が行き詰まることを懸念して推進できなかった、思い切った対中圧力政策も検討していく構えだ。米国の中国圧迫策には中国の企業と個人を制裁し、
台湾とさらに密接な関係を結ぶことも含まれている。中国を政治・経済の両面から揺るがすものだ。また、米国が「信頼できる」
パートナー国で構成する「経済繁栄ネットワーク」という新たなグローバル生産同盟の構築を検討していることは、世界的な対中圧力同盟をつくろうとする意図と受け止められている。

しかし、こうしたトランプ政権の構想が現実になるのは難しいとの評価が大勢だ。ウォール・ストリート・ジャーナルは同日、世界の政治家が脱中国を主張しているが、
「どの国も中国の物流システムには近づけなかった」とし、「中国は引き続き世界の工場になる」と見通した。世界10大港湾のうち7つが中国にあり、
現時点ではどの国も20年間にわたって構築された中国の巨大な産業生態系には追い付けないとの指摘だ。
今年3月の在中国米国商工会議所の調査によれば、
米国企業の70%以上は新型コロナウイルスの世界的大流行にもかかわらず、中国以外に工場を移転する計画はないと答えた。

https://news.yahoo.co.jp/articles/b17519fcd45fc7ae4bdcc7aa5f7995601ccb7588
5/6(水) 10:30配信