新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言の期間が延長されてから初の土曜日を迎えた9日、休業要請が緩和された地域では観光施設や店舗に客足が戻り始めたものの、普段の週末のにぎわいには程遠かった。密集、密接、密閉の「3密」は避けられた一方で、経営の厳しさを嘆く声も聞かれた。

政府は緊急事態の延長に合わせ、感染が抑制されている地域での休業要請緩和を部分的に認めた。その一つの香川県で、2〜6日に休業していた高松市のうどん店では、駐車場に県外ナンバーの車も見られた。高知市から夫婦で訪れた岡村幸広さん(44)は「普段は行列ができるが、きょうはすいていた。閉店した飲食店もあるけれど、みんな頑張って乗り越えてほしい」と気遣っていた。

静岡県三島市にある日本一長い歩行者専用のつり橋「三島スカイウォーク」は再開3日目でも人はまばら。橋上での密集を避けるため、係員が進行方向に向かって左側に寄るようアナウンスする中、観光客が雲の切れ間から見える富士山を写真に収めていた。

「連休中はずっと家にいたので、気分転換に来た」と、愛知県豊田市の会社員、浜口勇気さん(20)。「人との距離も取れる。ここは感染リスクが低いのでは」と話した。

日本三景の松島(宮城県)では、遊覧船は運休、土産物店などもほとんど休業していた。7日に再開した酒店の女性従業員(59)は「県外者に来てもらわないと厳しい。でも店を開けても人との接触が心配なので、複雑です」とこぼしていた。

厳しい対策の継続が必要とされる特定警戒都道府県の京都府。世界遺産・清水寺(京都市東山区)の参道は、臨時休業の張り紙が目立った。店先で八ツ橋を処分していた土産物店主の男性(65)は「もったいないけれど仕方ない」と諦め顔。「感染者が減り続け、安心できるような社会になれば、きっと元通りになるはず」と前を向いた。

首都圏の浅草や鎌倉などの観光地でも閑散とした光景が見られた。〔共同〕

2020/5/9 20:15
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