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東西2知事は「西部劇の主人公」←ココ
最側近も想定外の首相判断 一斉休校の衝撃

 「1カ月」と区切られた緊急事態宣言の期限が迫ると、出口戦略が問われるようになった。そんななか、安倍晋三首相は4月30日、宣言を延長する意向を表明。自治体首長らは相次いで対策を打ち出し、教育行政も対応に追われた。だがそれは、「格差」の存在も改めて浮き彫りにしつつある。

 「方角を示すことが政治の役割。それを示さず単に(宣言を)延長するのは無責任だ」。延長決定翌日の5月5日、大阪府の吉村洋文知事は報道陣を前に、こう言って国を批判した。

 その前日、安倍首相は宣言を月末まで延長すると表明した。ただ具体的にどういう状況になれば宣言を解除するのかという出口戦略の基準は示さなかった。吉村氏は新規感染者や陽性率などによる独自基準をつくり、休業や外出自粛の要請を段階的に解除する考えを表明。「大阪モデル」と名付けてみせた。

 吉村氏は大阪に地盤を持つ地域政党・大阪維新の会の代表代行。現代表の松井一郎・大阪市長と連携しながら、党の創設者である橋下徹・元大阪市長とも連絡を取り合う。

 新型コロナの感染が全国的に拡大するなか、吉村氏の言動は際立ってきた。3月19日に兵庫県との往来自粛を要請。下旬には緊急事態宣言を出すよう訴え始め、休業補償を定めない特別措置法を「ポンコツな法律」と批判した。国を批判しながら世論を味方につけ、独自の施策を推し進める――。吉村氏のそんな意図が見え隠れした。

2知事、ネット世論を味方に勢い
 西の有力知事が動けば、東も黙っていない。東京都の小池百合子知事は吉村氏の1時間半後に都庁で会見を開き、「緊急事態措置の延長に際して総額449億円の補正予算をまとめている」と力を込めた。休業や短縮営業の要請に応じた事業者に追加の協力金を支払う考えも表明した。

 小池氏もこの間、連日のように発信してきた。「ロックダウン(都市封鎖)」「オーバーシュート(感染爆発)」「重大局面」……。強烈な言葉はニュースとなって全国に伝わった。

 ネット世論などを味方につけて勢いづく両知事に押されるかのように、新型コロナ対策を担当する西村康稔経済再生相は宣言延長初日の5月7日、解除する基準として想定される項目について具体的に言及。累積感染者数や医療提供体制、経路不明の感染者割合などを挙げた。さらに、前倒し解除の候補として「(感染者判明が)1週間ゼロの17県」と踏み込んだ。

 こうした状況に、政府関係者は「知事2人は西部劇の主人公になりきって国と戦っている。法律をよく読めば、知事は要請を緩めることができるのに」。派手な立ち回りを演じる両知事に不快感をにじませた。

浮き彫りになる地域格差「カツカツだ」
 コロナ対策で首長がリーダーシップを競い合い、結果的に自治体間の差も浮き彫りになりつつある。

 4月21日、埼玉県の大野元裕知事は会見で「本来は国がやるべきことだが、(金額に)格差が生じるのは我々も不本意で、じくじたる思いだ」と嘆いた。休業した事業者への支給額が東京都の最大100万円に対し、埼玉県は最大30万円だったからだ。

 財源不足から、東京都のような追加の協力金を断念する自治体は少なくない。今年度補正予算に盛り込まれた臨時交付金(1兆円)も、各地の首長から「足りない」との不満が相次ぐ。

 吉村、小池両知事が対応を打ち出したのと同じ5月5日。静岡県の川勝平太知事は県の対策本部会議に臨んだ。川勝氏は県による事業者支援について「(財政が)カツカツで、これ以上はできない」と強調。憤りをあらわにこうぶちまけた。「『権限は任せるから丸裸で戦え』というのは大変なことだ」「(国に)強い不満を持っている」

朝日新聞デジタル 2020年5月9日 21時27分
https://digital.asahi.com/articles/ASN595R5SN57UTIL04Q.html?iref=pc_ss_date