【台北=伊原健作】半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)は15日、米アリゾナ州に最先端の半導体工場を建設すると発表した。2021年に着工し、24年に量産を開始する。総投資額は120億ドル(約1兆3千億円)になる見通し。半導体製造技術はハイテク分野を巡る米中覇権争いのカギを握るとされ、今後はIT(情報技術)機器などのサプライチェーン(供給網)にも影響しそうだ。

新工場の生産能力はウエハー換算で月2万枚。工場建設にかかる投資額は21〜29年で約120億ドルになるとしている。TSMCは声明で「米国の半導体生態系にとって最重要の戦略的意義を持つ」とした。

半導体の性能向上のカギとなる回路線幅の微細化を、5ナノ(ナノは10億分の1)メートルまで狭めた製品を生産する。TSMCの最先端工場はすべて台湾にあり、5ナノ品は今年後半から本格出荷が予定されている。

TSMCは新工場が雇用を生み出すとも強調した。1600人の高度人材に加え、関連のサプライチェーンも含めればさらに1000人が上積みされるという。11月に大統領選を控えるトランプ大統領を意識したとみられる。

TSMCは電子機器の頭脳となる半導体の受託生産で世界シェアの約5割を占め、特に最先端分野に強い。米アップルのスマートフォン「iPhone」のCPU(中央演算処理装置)もTSMCが全量生産する。

米側はこれまでもTSMCに米本土生産を要請していた。TSMCの劉徳音董事長は4月の決算会見の際、米国での最先端工場の建設について「積極的に検討している」と話していた。米半導体大手、インテルも米国内での供給体制を拡充する方針を示している。

2020/5/15 10:22
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59137730V10C20A5MM0000/?n_cid=BMSR2P001_202005151022
https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXMZO5913770015052020MM0001-PN1-4.jpg?auto=format%2Ccompress&;ch=Width%2CDPR&fit=max&ixlib=java-1.2.0&s=aee8055d540152c802edccfad0ac872f