NECと富士通、NTTデータのIT(情報技術)3社の2020年3月期決算が14日、出そろった。新型コロナウイルスの影響は限定的で、旺盛な国内IT投資に支えられて堅調だった。NECは23年ぶりの過去最高益となった。一方で、先行きの不透明感は強い。コロナ危機後のデジタル変革で、どんな価値を生み出せるか。各社の真価が問われている。

NECが12日に発表した20年3月期連結決算(国際会計基準)は、売上高が中期計画として掲げる21年3月期の3兆円目標を1年前倒しで達成する3兆952億円だった。純利益は従来予想を350億円上回り、前の期の2.5倍にあたる999億円。23年ぶりの過去最高益を記録した。

主な要因は、主力の官公庁や金融機関を中心に国内のIT投資が旺盛だったためだ。通信事業者向けの次世代通信規格「5G」関連の受注が順調だった。さらにウィンドウズ7のサポートが終わり、企業でパソコン更新に向けた特需も発生。通常時の価格競争に陥ることなく、営業利益を100億円押し上げた。

富士通も国内需要に支えられた。前期の連結決算(国際会計基準)は営業利益が前の期の約1.6倍にあたる2114億円。純利益は1600億円で554億円増えた。国内の全ての業種で受注が増加したほか、働き方改革などによるパソコン特需の恩恵を受けた。

同社は個人向けパソコンなどの非中核事業の再編といった構造改革を進めており、売上高は2.4%減少した。

NTTデータの連結決算(国際会計基準)は売上高が4.8%増の2兆2668億円、営業利益が11.4%減の1309億円だった。国内外で受注は好調だったが、事業構造改革や海外の低採算事業の見直しに伴って減益となった。

IT各社が期待を込めているのが「コロナ後」の社会での役割だ。富士通の時田隆仁社長はオンライン会見で「テレワークやデジタル化の加速は目を見張るものがある。ITに対する捉え方も変わっていく」と指摘した。NECの新野隆社長も「リモート化や非接触など、まさに我々の技術が社会変化のなかで大きな力を持つ」と述べた。

NTTデータは製造・流通業でサプライチェーン変革、金融・小売業では電子商取引(EC)を含めた非接触型の営業体制づくりなどを支援する。本間洋社長は「より良い社会の実現に貢献する」と、技術活用の機会を模索する姿勢を示した。

ただし先行きには不安が残る。NTTデータと富士通は21年3月期の業績予想の公表を見送った。NTTデータは前期の新型コロナの影響が営業利益で15億円、富士通では50億円と、比較的限定的だったという。

営業利益では約220億円増収の業績予想を公表したNECは、コロナの影響で21年3月期の営業利益に約400億〜500億円の下振れがあるとみる。経費削減とテレワーク需要の取り込みなどで補う方針だが、変数は依然として大きい。富士通の時田社長は「我々の業種は後から影響が出てくる。見通しは難しい」と語った。

新型コロナ後に広がる世界は未知数だ。そこで存在感を示すには社会の変化を敏感に察知し、先端技術を生かして柔軟なサービス提供につなげる姿勢が欠かせない。

日本のIT大手は海外勢と比べて革新的な価値の創造で見劣りするともいわれてきた。思わぬ形で早期に到来したデジタル変革に向けた商機を、どうつかむか。難しいかじ取りが求められる。
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO59105930U0A510C2X13000?s=4