中国は12日、米中貿易協定第一段階を実行すべく、米国から徴収した報復関税を返還する指示を出し、オーストラリアからの肉製品輸入を停止した。後者は報復措置か。強い者に弱く、弱い者には強く出る中国の戦略がそこにある。

◆中国政府「米国から徴収した報復関税の返還手続きをせよ」と国内企業に指示
 アメリカのトランプ大統領が激しく対中批判を強化している中、中国政府はアメリカに対して、米中貿易協定「第一段階協議」に即して、それを粛々と実行すべく、5月12日に政府指示を発布した。

 発布したのは「国務院関税税即委員会」で、通知のタイトルは「第二期対米追加関税商品第二次排除リストに関する国務院関税税即委員会の公告」で、文書番号は【税委会公告〔2020〕4号】である。

 内容は以下の通りだ。

 ――<対米追加関税商品排除活動試行展開に関する国務院税関税即委員会の公告>(税委会公告〔2019〕2号)に基づき、国務院関税税即委員会は申請主体が提出する有効な申請に対して審査を開始し、決められたプロセスに沿って第二期対米追加関税商品に対する一部分の第二次排除の関連商品名を以下のごとく公告する:添付リストに列挙している商品に対して2020年5月19日から2021年5月18日までの1年間、米国の301措置に対抗する追加関税を課税しない。また既に徴収した追加関税に関しては、これを返還するものとする。関連する輸入企業はリストを交付した日から6カ月以内に税関に対して規定に沿って手続きを行わなければならない。

 公文書の文言なので非常に硬いが、咀嚼してご説明すると「これから1年間は米国からの輸入商品に対して(報復関税としての)追加関税を徴収しないようにしますよ」ということであり、「すでに徴収してしまった関税は、6ヵ月以内に返還するよう手続きをしなさいね」ということなのである。

 前代未聞の措置ではないか。

 5月14日のコラム<感染者急増するロシアはコロナ対中包囲網にどう対応するか_モスクワ便り>の前半に書いた通り、トランプ大統領は「アメリカは国家として中国を提訴し、損害賠償を要求する用意がある」と言い、「アメリカ、イギリス、イタリア、ドイツ、エジプト、インド、ナイジェリア、オーストラリア」の8ヵ国の弁護士会や民間シンクタンクあるいはアメリカの場合は州の検察当局などが対中損害賠償請求を用意している中、中国はアメリカに「跪(ひざまず)いている」と言っても過言ではない。

 新型コロナウイルス論争に関する「舌戦」はさておいて、中国は実効的には世界最大の強国・アメリカには今のところ逆らわず、返す刀で「弱い国」と中国が看做(みな)している「オーストラリア」を斬りつけるという曲芸をやってのけている。

◆オーストラリアの肉製品企業4社からの輸入を停止
 同日(5月12日)、中国政府はオーストラリアの企業4社からの肉製品の輸入を停止する措置を取ると表明した。

 もし今コロナ問題がなかったら、実はほぼ当然のような動きなのである。

 2019年12月16日のコラム<棘は刺さったまま:米中貿易第一段階合意>をご覧いただければわかるように、筆者は昨年末の時点で、「アメリカから農産物を余分に輸入すると中国が約束したのなら、農産物が余って、結局どこかの国からの輸入を減らす以外にない」として、その国とは「オーストラリア」か「ブラジル」だろうと分析していた。

 この農産物は畜産物に関しても言えることで、フォーカスは「オーストラリア」に絞られる。

全文はソース元で
5/15(金) 20:22
https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20200515-00178723/
https://rpr.c.yimg.jp/amd/20200515-00178723-roupeiro-000-5-view.jpg