拍手よりマスクを−。
重症化リスクの高い高齢者が多く利用する介護療養型病院ではマスクや防護具不足が解決していない。

本島の療養型病院で働く50代の男性医療従事者は本紙取材に対し
「身を守る道具がないのに頑張れと言われたり、拍手されたりするつらさを知ってほしい」と訴えた。

男性が勤務する病院で職員に支給されるサージカルマスクは3〜5月、月に5枚だけ。
本来は外すたびに交換が必要で1日2〜3枚消費するが、今は支給マスクを干して1カ月に5枚を使い回す。
県から地区医師会を通し病院側に月1度マスクが支給されるが、その量は1日の出勤職員の半分以下の枚数。
「桁違いで足りない」と口にする。

2月以降、院内感染のリスクが身に迫る事態は頻発した。
新型コロナの疑いでPCR検査対象となった院内関係者は少なくとも5人以上。
「誰がいつ院内に持ち込んでもおかしくない」。
結果を待たず、検査対象となった段階で行動や濃厚接触者の特定に奔走した。

4月には関連施設の勤務職員1人に陽性反応が出た。
職員は発症3日前から勤務せず周囲に感染疑いも出なかったが、
地域に「院内クラスター(集団感染)が発生した」と誤ったうわさが流れ、問い合わせや利用控えが相次いだ。
通院患者が通所施設の利用を断られる事態も起きた。

家族との面会制限が長引く高齢患者の認知症が進まないよう気を配り、見えないウイルスに神経をとがらせる終わりの見えない日々。
この3カ月で精神的に追い詰められ、休職する同僚も出た。

男性は
「医療崩壊や感謝など大きな単語で済ませず、現場が何に困り、何を求めるのか、もっと耳を傾けてほしい。
 拍手する前に、行政は現場の実情を具体的に知ってほしい」と訴えた。

以下ソース:沖縄タイムス 2020年5月18日 10:05
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/572392