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毎日新聞

実習生ら来日できず農家ピンチ 収穫できず廃棄も 入管、再就職支援も
小松菜を収穫するフィリピン人の外国人技能実習生ら=福岡県久留米市で2020年5月14日午前11時2分、矢頭智剛撮影

 新型コロナウイルスの感染拡大で外国人技能実習生らが入国できなくなっている問題は、労働力を外国人に頼らざるを得ない国内農業の不安定な現状を改めて浮き彫りにしている。葉物野菜のハウス栽培が盛んな福岡県久留米市では、フィリピン人実習生らの来日が途絶え、収穫に必要な人員を十分確保できなかった一部農家では作物の廃棄も始まった。

 「実習生が来ないで収穫できず、成長しすぎた小松菜を数トン廃棄した」。同市北野町地区の農業法人「グラノフェルム」の米倉啓介社長(40)が顔を曇らせる。約100棟のハウスで小松菜を通年栽培し、1日600〜700ケースを出荷するが、車輪付きの台車に一日中腰掛けて、収穫から包装、箱詰めまでこなす仕事は厳しく、日本人の成り手は少ない。そのため同社は実習生らフィリピン人計9人を雇い、作業を回している。

 本来なら今の時期は、9人に加え、1月に現地で面接した2人も来日しているはずだった。ところが、日本側の入国規制に加え、フィリピンも首都マニラなどがロックダウン(都市封鎖)の対象となり、送り出し側の事務所も休業。一方で2人の労力を見越して生産した野菜の成長は止まらず、収穫時期を過ぎたハウス計18棟の小松菜を廃棄する羽目に。損失金額は200万〜300万円に上る。

 8月以降は、今働く9人のうち4人が在留期限を迎える。今後、入国規制などが解除されたとしても、面接から来日まで通常約10カ月かかり、補充要員の採用が間に合う保証はない。北野町地区で働くフィリピン人は400人以上。農家の多くはその労働力に依存し、人手不足は死活問題だ。

 こうした事態を受け、出入国在留管理庁は、感染拡大で業績悪化した企業に雇い止めされた外国人の情報を取りまとめ、人手不足に悩む農業などにマッチングする再就職支援を特例で始めた。しかし、同じく北野町地区でフィリピン人実習生ら10人を雇い、年間を通して葉物野菜を生産する「千広(ちひろ)農産」の稲吉広樹社長(42)は「製造やサービス分野の研修で来ている人たちが、農業でどれくらい働いてもらえるか分からない」と懐疑的だ。

 同社でも11月には実習生3人の在留期限が切れる。稲吉社長は「今年の冬は人手不足が見込まれるのでレタスの栽培はやめようと思う。短期で日本人の募集も考える」と話した。【門田陽介】

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