中国湖北省武漢市で、新型コロナウイルス感染症で親類を亡くした遺族らが、政府の責任追及を訴える行動を警察に妨害されるなどの圧力を受けている。国会に当たる全国人民代表大会(全人代)が22日に開幕するのを前に、習近平指導部は遺族らの結束を阻止し、抗議や訴訟の動きが広がらないよう神経をとがらせている。

「娘は水面から顔を出して呼吸できない魚のように口を大きく開けていた。胸が張り裂けそうだった」。新型コロナで25歳の娘を亡くした武漢市の女性(49)は今月、感染の流行初期に当局が情報を隠蔽(いんぺい)し、娘を含む多くの市民が犠牲になったとして、法的責任の追及を訴える文書をインターネットに公開した。

女性はまた、11日に市政府施設前で座り込み、感染拡大の真相解明を求めたが、警察に囲まれ排除された。取材に対し、文書を公開して以降、当局に行動を監視されていると明らかにした。

武漢市では政府を相手取った訴訟の動きも出ている。感染症の患者や遺族を支援する「顧問弁護団」によると、19日時点で2人の遺族が政府に損害賠償などを求める訴訟の準備を進めている。

ただ弁護団の協力者、楊占青氏によると、遺族同士が情報交換のために立ち上げた通信アプリのチャットグループは次々と閉鎖され、チャット管理人は当局に拘束されるなどしているという。

米国などが新型コロナの世界的流行を巡り中国の対応を問題視する中、中国当局は遺族らが抗議行動を起こせば国際社会の対中批判が勢いづくとの懸念を深めているとみられる。楊氏によると、当局は最近、遺族らに「敵対勢力の米国に利用されるな」と述べて騒ぎを起こさないよう警告しているといい、言論統制が一段と強まっている。(共同)

[2020年5月19日23時47分]
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