■ロケはストップ、生放送や収録も制限多い

 緊急事態宣言が出された4月以降、番組の新規ロケはほぼストップしている。

 スタジオでの生放送や収録も、MC陣は間隔をあけて立つようになった。それ以外のレギュラー出演者やゲストなども2名程度までがスタジオにいるだけで、あとは控え室や自宅などからのリモート出演というスタイルがすっかり定着した。

 番組内で流れるVTRも、スタッフだけが取材に出て撮影したものであったり、リモートでつないだゲストが出演したり、という形式がほとんどである。

 テレビは「新しい生活様式」にも提示されている「身体的距離の確保」と「3密の回避」を自らも実践している。

 「人との間隔は、できるだけ2m(最低1m)空ける」 「外出時、屋内にいるときや会話をするときは、症状がなくてもマスクを着用」

 また買い物時は、「1人または少人数ですいた時間に」「計画をたてて素早く済ます」「サンプルなど展示品への接触は控えめに」。

 食事では、「料理に集中、おしゃべりは控えめに」。などと提示されている。これらを踏まえて、番組を作っていかなければならない。

■「ふれあいロケ番組」は雰囲気が変わるかも

 タレントが地方や街に出る「もしもツアーズ」(フジテレビ系)、「出川哲朗の充電させてもらえませんか?」(テレビ東京系)、「鶴瓶の家族に乾杯」(NHK)などの「ふれあいロケ番組」などは雰囲気が変わってしまうだろう。

 出演者がマスクをして、地方の人とふれあう形になる。ロケのお相手の人もマスク姿である。

 ハグはもちろん握手などの接触も厳しい。またロケ先に多くの人が集まってしまうことも避けなければならない。

 さまざまな方法で見せ方を工夫していくと思うが、どのように対処するのだろうか。

 また「ヒルナンデス!」(日本テレビ系)などの「グルメ・ファッション情報番組」では、ファッションコーディネート企画で、店舗に出向いてさまざまな服を見て選ぶという行為は推奨されないので、こちらもロケは厳しい。

 出演者が全員マスクにゴム手袋というスタイルで撮影に臨む番組もあるかもしれないが(私ならそれ自体を1つの企画にしてやるだろう)。

 グルメリポートは、ひとくち食べて「うわぁおいしい!」と声を上げるような行為がやはり推奨されていないが、こちらはどうなるのか。

 飲食や観光業を応援するという意味でも、情報へのニーズがあるのは事実なので、視聴者がどこまで許容するのかを慎重に見極めないといけない。

 現時点でも、客数が減った飲食店による“苦肉のテイクアウト”“お弁当”を取材しているニュースや番組もあるので、ここは内容次第である。

■“雛壇タレント”の出演機会は激減か

 一方、スタジオ収録では、いわゆる“雛壇”番組は人数を絞って収録を行うことになるだろう。「使えるタレント」が厳しく選抜されるので、自ずと出演が減るタレントも出ることになる。

 そして「VS嵐」(フジテレビ系)のような身体を使ったゲーム系の番組は難しい。ある程度内容を変えて作っていくことになるのではないだろうか。

 私がもっとも心配しているのはスポーツ中継である。

 大相撲夏場所は中止になった。名古屋場所の開催も不透明である。プロ野球の開幕はいまだに検討中、高校野球夏の甲子園も中止が決まった。

 私が企画会議に出ていた、あるキー局のスポーツ局も現在ほとんど仕事がなく、一緒に仕事をしていた制作会社はこの3カ月、無収入が続いているという。

 オリンピックでも開催都市によってはあまり人気が高くない「野球」が、まばらな客入りの静かなスタジアムで試合が行われているのを見た人はいるだろう。

 もちろん「オリンピック」だから視聴者は熱心に見るわけで、これがプロ野球ペナントレースの通常の試合だったら(熱烈なファンは別として)見る側が強い興味を持つことは難しい。

 CS放送やDAZNなどの専門チャンネルでは確実に見てくれるファンはいるが、地上波ではスポンサーが撤退する可能性もあり、厳しいだろう。

 ただそのDAZNも世界中のスポーツが「止まって」いるので、仕事に携わっていた制作会社は当然青息吐息である。

 コンサートなどの「イベント」と同様に、スポーツイベントが元の状況に戻らない限り、スポーツ中継もまた復活はしない。
全文はhttps://news.yahoo.co.jp/articles/7cd97c80731d4793ed63c315d3c7bd7b08686f1f?page=4