今朝、早く業者がつれに来るってんで、
ゆんべ御馳走食わしてやったんだ。
そしたらあの野郎、察したらしい。

今朝トラックが来て、馬小屋から引き出したら、
入り口で急に動かなくなって、おれの肩に、
首をこう、幾度も幾度もこすりつけやがった。

見たらな、涙を流してやがんのよ。
こんな大粒の。こんあ涙をな。

18年間オラといっしょに、
それこそ苦労さして、用がなくなって。
オラにいわせりゃ女房みたいなあいつを。

それからふいにあの野郎、
自分からポコポコ歩いてふみ板踏んで、
トラックの荷台にあがってったもんだ。

あいつだけがオラと、苦労をともにした。
あいつがオラに何いいたかったか。
信じていたオラに、何いいたかったか。