歌舞伎町の飲食店主らため息「悪いイメージつきやすい」 夜の街で感染拡大
 新型コロナウイルスの感染拡大への懸念が高まっている。東京都内では「東京アラート」も発令され「夜の街」への警戒も強まった。第2波を防ぐには「3密」を避けるのが不可欠だが、店を再開したばかりの飲食店主からは「客がまた減ってしまう」とため息ももれる。

 都によると、2日までの7日間に感染が確認された114人のうち、夜間に営業する飲食店の従業員や客など「夜の街」に関係する人は32人にのぼる。そのうち、新宿周辺の繁華街の発生は13人だった。

 「夜の街で感染が広まっています。ご注意ください」。3日午後8時過ぎ。新宿・歌舞伎町の入り口で、区の委託を受けた警備員が呼びかけた。酔客の多くはその横を立ち止まることなく通り抜けていく。

 歌舞伎町では多くの飲食店が緊急事態宣言と休業要請を受けて休業した。創業約40年の居酒屋「庄助」は4月上旬から2カ月にわたって店を閉めていた。家賃の支払いには貯金を取り崩し、アルバイトの学生には辞めてもらった。6月1日に再開し、久々に顔を合わせた常連客と喜び合ったが、直後に東京アラートが発令された。店主の男性(73)は「しょうがない。客はまた減るかもしれないけど、命あってのものだから」と話した。

 「歌舞伎町は悪いイメージがつきやすい。これから街を歩く人も減るだろう」。歌舞伎町にある鉄板焼き店の店舗責任者の男性(34)はため息をつく。男性も都が「ステップ2」に移行した1日に営業を再開した。その日は数組が来店したが、2日に感染者の拡大が報じられると、客は一人も来なくなった。

 「レインボーブリッジを光らせるだけで中身のないアラートを出してどうなるというのか。中途半端な呼びかけでは、飲食店の経営が厳しくなるだけだ」

 居酒屋「蓬」店主の蓬田秀一さん(51)は「歌舞伎町すべてが悪い」という風潮に憤っていた。「ほかの飲食店すべてが巻き込まれるのは困る。まだ緊急事態宣言解除は早かったのではと思ってしまうよ」と話す。

 飲食店のうち、キャバクラなど接待を伴う店は、休業要請緩和の見通しが立っていない。それでも多くの店舗は6月に入って営業を再開した。客の検温や手指消毒をするという条件で営業を再開したある店舗の男性オーナー(39)は「女性スタッフの生活もかかっているので営業しないといけない」と漏らす。

 キャバクラなどの業界の健全化などを目指す一般社団法人「日本水商売協会」はガイドラインを作成。マスク姿で接客する▽30分に1度は手洗い・うがいをする▽保健所からの情報開示請求には最大限応じる――などの内容を盛り込む。

 同協会の甲賀香織代表理事(40)は「対策を取っている店もあるのにひとくくりに悪者とみられるのは理不尽」と話した。

【斎藤文太郎、井川諒太郎、李英浩】
毎日新聞 2020年6月3日 20時48分(最終更新 6月3日 20時48分)

https://mainichi.jp/articles/20200603/k00/00m/040/250000c