猪俣健・米アリゾナ大教授(考古学)らの研究グループが、メキシコ南部タバスコ州で紀元前1000年ごろに造られた遺跡を発見したと発表した。この地域などで栄えた古代マヤ文明の遺跡とみられ、中でも最古で最大の公共建築だと判明したという。成果は3日付の英科学誌ネイチャーに掲載された。

 チームが調査に航空レーザー測量を導入した結果、同州アグアダフェニックスで大規模な遺跡がみつかった。南北約1・4キロ、東西約400メートル、高さ約15メートルの舞台状の広場(大基壇)の周囲には、中小の広場や舗装された土手の道9本、人工貯水池などがあった。
 大基壇の盛り土の量は320万〜430万立方メートル(東京ドームの容積は124万立方メートル)と推定され、マヤ地域で後の時代に造られたピラミッド遺跡などを含めても最大の建築物だという。堆積(たいせき)物の分析から、紀元前1000年までに建造が始まり、約200年間で完成したとみられる。

 明確な社会階層を示す遺物などは見つかっておらず、大基壇のような大建造物も住民の共同作業で造られ、共同体の儀式の場として使われたとみられる。猪俣教授は「権力者の登場や中央政府のような組織ができる社会の階層化が起こる前に、大建築が造られたことを示している。マヤ文明の発展や人類社会一般の変化を考える上で、非常に大きな意味がある」としている。【三股智子】

毎日新聞2020年6月4日 00時00分(最終更新 6月4日 00時00分)
https://mainichi.jp/articles/20200603/k00/00m/030/177000c