シリーズ・疫病と人間
合理的だったドイツを、ナショナリズムが覆う マルクス・ガブリエル氏(哲学者)
 危機における民主主義や道徳はどうあるべきか。気鋭の哲学者として注目を集めるドイツ・ボン大学教授のマルクス・ガブリエル氏(40)に聞いた。【聞き手・ボン(独西部)念佛明奈】

 ◆合理的だったドイツを、ナショナリズムが覆う 道徳的な新しい世界へ、日本の視点がほしい

 良質な民主主義の下では、自分が賛成している事柄でもあえて批判することがある。私は(新型コロナウイルスの感染が拡大した)危機下において、ドイツ政府がしてきたほぼ全てを支持するが、それでも批判はする。批判は他の選択肢を可視化するためのものだ。現在の危機の中で、新たな種類の社会を創造するためには、もっと批判的思考が必要だ。

 危機の時に人々が支持するのは、良いことをするリーダーだ。富が無限にあるような時は、人々はトランプ米大統領を支持する余裕がある。しかし危機時には愚か者と付き合う余裕はない。その点、客観的で合理的に物事を進めているという「物語」を構築したドイツ政府はとてもうまくやった。(以下有料版で,残り4465文字)

残りの見出し「日本のポピュリズム」
「ソフトバージョン」
「危険な「衛生人種差別」」
「(治療の)トリアージ(優先順位)は反モラル」
「ソフトパワー支配」

毎日新聞2020年6月14日 東京朝刊
https://mainichi.jp/articles/20200614/ddm/010/040/019000c