3月に亡くなった島根県の小沢秀多(ひでかず)県議への、福田正明県議(県議会自民党)の本会議での追悼演説が波紋を呼んでいる。小沢氏の実直な人柄を伝えようとして紹介したエピソードが、公職選挙法違反に問われた際の司法の対応を巡る真偽不明な内容だっただけに、15日の県議会運営委員会で「不適切」などの指摘が出た。

 福田県議にとって小沢氏は松江北高校の1年後輩。長らく同じ会派で活動してきた間柄だ。10日に行われた演説で、福田県議は小沢氏が1995年の県議選に初めて立候補したエピソードを披露。一升瓶を手土産に地元有力者の家をまわり公選法違反で罰金刑を受けたとした上で、「検察官は純朴な人柄にほれ込み、次回の選挙に出られるよう、公民権停止を3年間に短縮した」「買収という実質犯に対しては異例の処分」などと述べた。

 これに対し、昨年4月の知事選を巡って福田県議らの会派と分かれた自民党議員連盟所属の複数の県議が15日、「他の県議も何かあったら(検察に)忖度(そんたく)してもらえるのかと県民に思われた懸念もある」(田中明美県議)などと批判した。ただ、福田県議と同じ会派からは「功績を称えようという趣旨・意思は福田県議の話から十分に伝わる」(多々野剛人県議)などと擁護する声も出た。

 福田県議は取材に「県議になれた原点として小沢県議がいつも言っていたこと。親しい友人として、彼の純朴な人柄を伝えるために追悼の中に入れてあげたかった。(事前に)弁護士とも内容を相談している」と述べた。松江地検は「コメントはない」としている。(浪間新太)

朝日新聞 2020年6月16日 11時41分
https://www.asahi.com/articles/ASN6J3QG2N6HPTIB005.html