【ワシントン時事】日本による陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画停止は、米国内で大きな驚きをもって受け止められた。河野太郎防衛相は技術的問題やコストなどを理由に挙げたが、日米の安全保障専門家らは一様に、政府内で配備の是非をめぐる争いがあったのではないかと推測。今後の日米防衛協力を不安視する声も聞かれた。

 米保守系シンクタンク「ハドソン研究所」の村野将研究員は、「陸上イージスから1発40億円もする迎撃ミサイルを発射するのは、核かもしれないミサイルが飛んできているという国家存亡に関わる状況だ。ブースター落下による被害を心配して配備計画を見直すのは釣り合いが取れない」と指摘。「政府は陸上イージスに代わるミサイル防衛の案を示していない」として、イージス艦隊の運用や日米防衛協力の役割分担にも影響を及ぼすと懸念を示した。

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 その上で「日本では安全性に対する地元住民の不安をあおれば、最終的に政治の腰が折れるという悪い前例を作ってしまった」と分析。今後新たな防衛アセットの配備計画が持ち上がるたびに、中国や北朝鮮、ロシアがそれを阻止するために情報戦を仕掛けてくる可能性があると語る。
 一方、カーネギー国際平和財団のジェームズ・ショフ上級研究員は、北朝鮮や中国の脅威が今後どの程度高まるかに左右されると前置きしつつも、「日本は最終的に陸上イージス配備に進むだろう」と語った。今夏始まる見通しの在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)の更新交渉に触れ、「善かれあしかれ陸上イージスの問題は交渉のムードや流れに影響する」と予想する。
 また、もし配備計画が白紙撤回となった場合、退役する航空自衛隊のF2戦闘機の後継となる次期戦闘機などの今後の日米共同開発にも「暗い影を落としかねない」と警告している。

時事通信 2020年06月16日20時32分
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